研究 (Research)

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「量子2.0」の医療への応用 ~室温超核偏極技術を用いた超高感度MRI/NMR〜 (Medical applications of ‘Quantum 2.0’ – Ultra-sensitive MRI/NMR using room temperature hyperpolarisation technology)

准教授 根来 誠(世界最先端研究機構 量子情報・量子生命研究センター) NEGORO Makoto(Center for Quantum Information and Quantum Biology)

  • 全学・学際など (University-wide, Interdisciplinary, etc.)
  • 量子情報・量子生命研究センター (Center for Quantum Information and Quantum Biology)

研究の概要

物質中の原子核スピンの状態を揃え、その結果NMR/MRI信号強度を1,000倍から10,000倍に上げることを、超核偏極技術と呼びます(図1)。そうなった物質は量子センサとして、生体内を測定するNMR/MRI薬剤となり医療診断に用いることができます(図2)。例えば、抗がん剤治療において、薬効の判定までの期間を投与翌日まで縮め、患者さんの負担を大幅に軽減できると期待されています。

超核偏極技術は、極低温を用いる方法では欧米が先行しています。しかし、超高感度のNMR/MRIを低コスト化し、世界中の実験室や病院に置けるようにするには室温化が必要です。「量子2.0」技術である室温超核偏極は我々が先鞭をつけ、各国の研究開発競争が始まったところです。超高感度なセンサとして、物質の微小な変化をとらえることができるので、創薬や化学の材料分析への応用も検討を進めています。

図1 超核偏極技術(「DNP」とも呼ぶ)は原子核スピンの状態を揃える
図2 超核偏極化した物質を生体に注射し、患部まで到達したところで測定する。患部に到達するまでの時間に超核偏極状態が壊れないよう、「量子符号化処理」を行い、患部でより高感度な状態に変換する

研究の先に見据えるビジョン

「量子2.0」技術センサの実現

「量子2.0」技術によるセンサが生命現象の本質的理解を進め、新たな診断・治療法、予防法などが登場し、健康寿命の延伸実現と関連する新たな医療・ヘルスケア産業基盤をもたらします。

担当研究者

准教授 根来 誠(世界最先端研究機構 量子情報・量子生命研究センター)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2021/specialite_002_4/

キーワード

量子2.0:これまで制御や利活用が困難であった量子コヒーレンスや量子もつれなど量子特有の性質を利用する技術

応用分野

医療応用(NMR/MRI薬剤、MRI装置)/製薬(創薬スクリーニング)/化学(微量分析)

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2020」より抜粋したものです。