研究

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量子コンピュータを用いた化学シミュレーション ~量子化学に向けた量子古典混合アルゴリズムの開発~

准教授 水上 渉(世界最先端研究機構 量子情報・量子生命研究センター)

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研究の概要

量子コンピュータはまもなくNISQマシン(数十から数百程度の量子ビット(qubit)からなるエラー訂正機能のないタイプ)として実用化が始まると言われています。

我々は、量子化学の分野において、1) 物性値算出や分子構造最適化に不可欠な解析的エネルギー微分を行う方法、2)限られたqubit数を効率的に用いる方法を開発し、実用的量子化学計算を量子・古典ハイブリッドアルゴリズム (VQE、図1) で行える前段階にまで発展させてきました 。

現在、量子コンピュータの強みを圧倒的に生かすため、Dirac方程式(特殊相対論を考慮した波動方程式)と量子開放系を高効率に解くVQEの開発を進めています。古典の置き換えではなく古典が避けてきた領域への挑戦で、「複素数波動関数が生じる量子化学問題に対する量子加速」という新しい可能性の実現が期待されます(図2)。

図1 量子・古典混合アルゴリズムは古典コンピュータと量子コンピュータがそれぞれの得意な部分を担うアプローチ
図2 量子コンピュータが得意な複素数波動関数が現れる領域をターゲットとするVQEを開発・実装し、量子加速を目指す

研究の先に見据えるビジョン

NISQマシンから始まる量子コンピュータの社会実装

自然界の窒素固定や光合成の人工的な模倣は、量子コンピュータが必要と考えられています。エネルギー消費を飛躍的に抑え地球温暖化問題を解決するとともに、新たな産業の基盤を実現します。

担当研究者

准教授 水上 渉(世界最先端研究機構 量子情報・量子生命研究センター)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2021/specialite_002_5/

キーワード

NISQ:Noisy Intermediate Scale Quantum Computing
VQE:Variational Quantum Eigensolver

応用分野

金属触媒の反応過程(窒素固定・二次電池・メタン活性化)/光機能材料(太陽電池・有機EL・光合成)

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2020」より抜粋したものです。