研究

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0.1ミリの粉末コンピュータの開発 ~ムーアの法則の限界突破を目指して~

教授 三浦 典之(情報科学研究科)

  • 理工情報系
  • 情報科学研究科

研究の概要

この十数年間で、コンピュータは飛躍的に進化し、チェスや囲碁などでAIがヒトの能力を上回るまでになりました。それは「ダウンサイジング」といって、コンピュータを構成する回路素子を小さくする技術の開発が年々進んでいったからです。しかし、このような「機能の集約」を追求する従来のコンピュータでは、ヒトの体に入れるほどの小型化には辿り着けないと私は気づきました。
そこで、これまで私が研究を続けてきた無線給電・通信の技術を駆使して、集約していた計算機能を「いったん分解して再構成」することで、個々の機能を極限まで小型化した高性能コンピュータの新しいカタチを思いつきました。これが「粉末コンピュータ」です(図1)。体に負担をかけることなく、体内で体調や心の状態を計測・解析し、病気の予防や症状の改善に貢献します。将来的には、直接病気を治す技術の開発につながると期待されます(図2)。

図1 物理世界と情報世界の境界融合を牽引してきたダウンサイジング(本研究のターゲットは0.1mm角)
図2 粉末コンピュータを利用したSociety5.0のための社会サービス展開

研究の先に見据えるビジョン

2030年の地球に向けた物理と情報の融合

Society5.0では、我々の抱える問題を解決する技術が生まれることが期待されます。ここでいう問題とは、ほんとうに解決が困難な、テロ、組織犯罪、核兵器、超高齢化、災害、資源枯渇等の社会問題を指し、これらの問題は、全て物理世界にあります。爆発的に進化を続ける情報技術を駆使してこの問題を解くには、物理世界と情報世界の境界を融合する新機能インターフェイスが今後の鍵になります。物理世界に物理的に溶け込む粉末コンピュータは、両世界の境界をシームレスに繋ぐ基盤技術であり、健康寿命の延長、見守り・介護・防犯への活用、リラクゼーションの実現により、「こころ」の世界にも踏み込む新しい社会サービス応用への展開を目指します。

担当研究者

教授 三浦 典之(情報科学研究科)

キーワード

粉末コンピュータ/生体情報計測/心理計測/エッジ学習AI/リアルタイムフィードバック

応用分野

病気の予防・症状の改善/生体計測・心理計測装置/高齢者・乳幼児の看護・見守り

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2020」より抜粋したものです。