研究

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形状制御や表面修飾可能な有機多孔質材料の開発によるガス分子の吸着・分離・貯蔵

教授 藤内 謙光、助教 岡 弘樹(工学研究科 応用化学専攻)

  • 理工情報系
  • 工学研究科・工学部

研究の概要

有機多孔質材料はこれまでの吸着や分離、精製、触媒だけでなく、光・電・磁特性を付与することでセンサーやイメージングなど様々な用途に展開されようとしている。
我々の研究グループでは多孔質有機塩(porous organic salts: POS)という新しい有機系の多孔性材料を提案してきた。今回、多孔質材料の空孔表面を様々なハロゲン元素で修飾し、そのハロゲン元素に応じてガス分子への選択性や吸着量などの吸着特性を変化させることができた。

研究の背景と結果

無機系の多孔質材料は古くから物質の貯蔵や分離、精製、さらには触媒など様々な分野で利用されてきた。一方で用いられる素材や構造、性質に限りがあり、この20年余り有機物質を構成要素にもつ有機系の多孔質材料の研究が盛んにおこなわれている。その中でも我々のグループが発表してきた多孔質有機塩(porous organic salts: POS)は酸性分子と塩基性分子を混ぜ合わせるだけで構築され、極めて簡便に生産することができる。またそれぞれの成分の設計により、空孔の大きさや、形状、空孔表面の性質を制御することができる。さらに、光・電・磁特性の付与が簡便であり、様々なセンサーなどへの応用展開が可能である。使用後は洗浄による再利用や、分解による化学再生が容易で、持続可能な材料開発に資する有機材料である。
今回、多孔質有機塩の空孔表面を水素および4種類のハロゲン元素を露出させた多孔質構造を構築した。水素が露出している多孔質材料は二酸化炭素のみを選択的に吸着した。一方でフッ素を露出させた多孔質材料では、二酸化炭素の吸着量は増加し、さらに酸素や窒素も吸着できるようになった。
また、塩素を露出させたものはガス分子への選択性が変化し、酸素をもっともよく吸着するものとなった。以上のように、空孔表面の化学状態を制御することで、物質に対する吸着特性を変化させることに成功した。

図1:多孔質有機塩の階層的構築
図2:各種多孔質有機塩のガス吸着挙動
図3:各種ハロゲン元素を露出させた多孔質構造

研究の意義と将来展望

我々の多孔質有機塩は、空孔の形状や大きさ、表面の化学修飾が可能である。本研究成果では、空孔表面のハロゲン元素での修飾を達成し、その多孔質材料の性質を制御できることを実証した。特に吸着量や選択性、分子認識能の制御が可能というのは特筆すべきことである。このような化学修飾は他の置換基や元素でも可能であり、二酸化炭素やメタン、フロンなどの地球温暖化に悪影響をおよぼすガス種の回収や分離、水素、アンモニアなどのグリーン・エネルギーの貯蔵、ダイオキシンや PFOA、PFOS などの有害物質の高感度、高選択的なセンシングや回収など様々な用途に展開可能である。

担当研究者

教授 藤内 謙光、助教 岡 弘樹(工学研究科 応用化学専攻)

キーワード

有機多孔質材料/表面修飾/CO2回収/センシング

応用分野

カーボンニュートラル/エネルギー貯蔵/センシングデバイス

参考URL

http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~tohnaiken/scientific/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2023(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。