研究 (Research)

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微細表面テクスチャの導入による切削工具の高機能化とその応用 (Direct observations of tribological behavior in cutting with textured cutting tools)

准教授 杉原 達哉(工学研究科 機械工学専攻) SUGIHARA Tatsuya(Graduate School of Engineering)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 工学研究科・工学部 (Graduate School of Engineering, School of Engineering)

English Information

研究の概要

近年、切削工具表面に微細な三次元周期構造、すなわち微細表面テクスチャを導入することによって、切削工具の高機能化を図るという研究が注目を集めている。その一方で、表面構造のパターンとそれがもたらす機能の関係には不明な点が多く、最適な表面構造についての設計手法も未だ確立されていない。そこで本研究では、粒子画像流速測定法を用いた切削加工現象のその場観察技術を援用することで、微細表面テクスチャがもたらす効果を「可視化」することによって、工具表面テクスチャの作用機序や発現条件を明らかにし、最適なテクスチャ設計指針の明確化を試みた。

研究の背景と結果

本研究グループでは、切削工具表面は可能な限り平滑に仕上げるべきであるという従来知見とは全く逆に、工具表面に所定の凹凸を有する微細な表面テクスチャを導入することによって様々な機能を発現する切削工具、すなわち「微細表面テクスチャを有する切削工具(図1)」を提案し、開発を進めている。その結果、切削工具への微細表面テクスチャの導入によって、切削工具の耐摩耗性や耐凝着性、潤滑性といった、様々な機能が飛躍的に向上することを明らかにしている。その一方で、経験的なノウハウの蓄積が進む一方で、理論に基づく合理的な設計手法の確立には至っていないことが課題となっている。そこで、本研究では、粒子画像流速測定法を用いた切削加工現象のその場観察技術を援用することで、微細表面テクスチャがもたらす効果を「可視化」することによって、工具表面テクスチャの作用機序や発現条件を明らかにし、最適なテクスチャ設計指針の明確化を試みた。
切削加工現象の可視化にあたっては、二次元切削加工の様子を高速度カメラによって撮影し、得られた連続画像に対して粒子画像流速測定法を用いた解析を行うことで、加工点近傍の材料流れやひずみ分布、速度分布などを定量化した(図2)。その結果、工具表面への微細表面テクスチャの導入によって、テクスチャ近傍における材料流れが改善しているだけではなく、切削機構そのものが大きく変化し、それにともない比切削エネルギーの著しい低減効果が得られていることが明らかとなった(図3)。さらに、これらの効果は工具すくい面上の摩擦応力分布と関連付けて整理することが可能であり、“ すくい面上のどの部分に形成されたテクスチャが、どのような効果を発現することができるのか ” という指針を明確化することが可能となった。

図1 微細表面テクスチャを有する切削工具のコンセプト
図2 切削加工現象の可視化手法
図3 テクスチャ近傍の材料変形挙動の可視化結果

研究の意義と将来展望

近年の切削加工分野では、加工の高速化・高精度化・ドライ化、被削材の難削化が進み、切削工具は極めて過酷な熱的・機械的負荷に晒されている。そういった中で、本研究は “ 工具表面の微細な三次元構造 ”という新たな要素に着目した研究技術であり、従来手法では困難であった切削工具の高度化の実現が大いに期待できる。さらに、可視化によるメカニズムの理解が進むことによって、経験的なノウハウの蓄積が進む一方で、理論に基づく合理的な設計手法の確立が課題とされている表面テクスチャリング技術の体系化が促され、新たな研究・技術分野の開拓・確立が期待できると考えている。

担当研究者

准教授 杉原 達哉(工学研究科 機械工学専攻)

キーワード

可視化/切削加工/トライボロジー

応用分野

ものづくり/金属加工/可視化

参考URL

http://www-cape.mech.eng.osaka-u.ac.jp/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2023(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。