研究 (Research)
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ギャップ変動を伴うガスメタルアーク溶接の溶融池モニタリングと深層学習モデルによる溶落ち予測と溶込み深さ推定 (Burn-through prediction and weld depth estimation by deep learning model monitoring the molten pool in gas metal arc welding with gap fluctuation)
准教授 野村 和史(工学研究科 マテリアル生産科学専攻) NOMURA Kazufumi(Graduate School of Engineering)
研究の概要
ギャップ変動のあるレ型開先ガスメタルアーク溶接において、溶接中のモニタリング画像を用いた深層学習モデルを構築し、溶接品質を予測した。Python とライブラリ Keras を利用し、溶融池やアークの様子を含む画像を入力とした CNN(畳み込みニューラルネットワーク)モデルを作成した。出力は、分類モデルを用いて溶落ちの有無を、回帰モデルを用いて溶込み深さとし、それぞれ予測や推定を行った。階段状およびテーパ状のサンプル形状に本手法を適用した結果、過大溶込みと溶落ちを事前に予測することができた。また、溶込み深さの推定については、95% 以上が1 mm 未満の誤差という高精度を得ることができた。
研究の背景と結果
アーク溶接法は、接合技術の中でもその簡便さと生産効率の高さから、ものづくりの現場では欠かせない技術である。しかし実際には、アーク溶接プロセスに伴うさまざまな外乱や不安定性により多くの課題が残っており、継手性能の完全な保証はできていないのが実情である。例えば、部品精度や溶接熱ひずみの影響により、母材間には制御できない隙間が発生する。その結果、母材の裏面には過大溶込みや溶落ちなどの溶接欠陥が発生する場合がある。また、溶落ちの有無に加えて溶接継手の性能の重要な指標である溶込み深さも同様の理由で不安定になるといった問題がある。
本研究では、カメラを用いた溶融池などのモニタリング結果と、溶込み深さや溶落ちの有無といった溶接品質との相関を深層学習によって明らかにし、インプロセスモニタリングによる溶接品質の可視化と予測を単一のカメラのみで実現することを目的とした。具体的には、テーパ状やステップ状のギャップ変動を含むレ型開先ガスメタルアーク溶接において、1 台のカメラで取得した溶融池画像を用いて CNN モデルにより溶接品質を予測・推定した。入力画像は980 nm のバンドパスフィルタを使用して溶接中に0.1秒ごとに得られた溶融池を含む画像群とした。まず、分類問題として溶落ち予測モデルを構築し、過大溶込みと溶落ちを事前に予測することに成功した。さらに、回帰問題として溶込み深さ推定モデルを構築した。テーパ状、ステップ状、両方のギャップ試験体で構成されるトレーニングデータを使用していつくかの未知データについて推定を行った結果、約95% 以上が 1 mm 未満、87% 以上が0.5 mm 未満の推定誤差となり、非常に良い推定結果を得ることができた。
研究の意義と将来展望
本研究は、1カメラによるモニタリングのみで見えない溶接品質を推定できるものであり、対象としたレ型開先以外にも応用が可能である。出力も溶込みではなく欠陥の有無などへの展開も期待され、溶接施工の品質保証に関して革新的なモニタリングツールとなると考えられる。
担当研究者
准教授 野村 和史(工学研究科 マテリアル生産科学専攻)
キーワード
AI/CNN/カメラ/溶接/溶込み深さ
応用分野
非接触検査/品質保証/トレーサビリティ