研究 (Research)

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線形摩擦接合を用いた接合部の組織制御とその応用 (Microstructural control of a joint by linear friction welding and its application)

教授 藤井 英俊、特任准教授 森貞 好昭(接合科学研究所) FUJII Hidetoshi , MORISADA Yoshiaki(Joining and Welding Research Institute)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 接合科学研究所 (Joining and Welding Research Institute)

English Information

研究の概要

我々の研究グループは、あたかも接合部が存在せず、各種金属材料同士をそのまま連続的に接合することができる「完全接合」技術を確立した。接合したい材料同士を押し付けながら昇温する固相接合に関して、「大きな接合圧力を印加することで接合温度が低下する」という意外な接合原理の発見により、接合圧力で接合温度を正確に制御することに成功した。従来の接合方法では接合部は構造体の特異点となり、金属材料が本来有する優れた特性を十分に活用することができなかったが、圧力制御線形摩擦接合では接合部を母材と同等と見做すことができる。例えば、チタン合金や鋼は無変態接合によって接合部の信頼性を担保でき、アルミニウム合金では熱影響部の軟化を完全に抑制することができる。

研究の背景と結果

金属構造体の製造には接合が不可欠であり、種々の金属材の接合方法について盛んに検討が進められてきた。しかしながら、チタン合金や鋼は接合中の相変態により接合部が脆化し、母材の特性を十分に活用した接合体を得ることが極めて困難である。また、アルミニウム合金の場合、摩擦攪拌接合などの材料を溶かさない固相接合を用いた場合であっても、接合時の温度上昇に起因する接合部の軟化を抑制することが困難で、もとの素材の70%程度の強度しか得られず、接合部の強度に合わせた構造設計が必須になるという課題が存在した。
これに対し、固相接合法の一つである線形摩擦接合に着目し、接合温度を低下させる方法について鋭意検討したところ、被接合材同士を低い圧力で押し付けて慎重に温度制御するのではなく、逆に、被接合材同士を大きな圧力で押し付けることで接合温度が低下することを見出した。これは、大きな接合圧力の印加により、より低い温度で被接合界面が変形するためであり、この原理に従うと、接合温度を極めて正確に制御することもできる。これを利用することでアルミニウム合金を200℃程度の低温で接合することに成功し、形成される接合部は母材と全く同じ硬度分布を有することを明らかにした。
また、接合温度の制御により、チタン合金や鋼の接合部に任意の組織を形成することができる。これにより、接合部は特異点とはならず、母材と同等と見做すことができ、構造体の設計を極めて単純化できる。
その結果、各種金属材の素材としての特性をそのまま活かした理想的な接合構造体を得ることができる。

図 A6061 アルミニウム合金接合部の硬度分布
新接合技術で得られた接合部は母材と同じ硬度分布を有しています。このような
接合部は、あらゆるアルミニウム合金に形成させることができます。
図 線形摩擦接合の模式図
被接合材同士の加圧・摺動により接合を達成します。
図 A6061 アルミニウム合金継手の断面写真
アルミニウム合金材同士が極めて薄い接合界面を介して接合されています。

研究の意義と将来展望

本研究成果により、接合部における強度及び信頼性の低下を考慮することが不要となり、様々な手法で高強度化されたチタン合金、鋼及びアルミニウム合金等の各種金属材料の特性がそのまま反映される良好な接合構造体を得ることができる。また、金属構造体の製造のみならず、部分的な補強技術や補修技術としても活用できる。さらに、材料特性の劣化に留意することなく、金属材を任意の形状及び大きさに組み上げていくことも可能となることから、切削によって材料を除去する従来の製造方法から、必要最小限の材料を付加する製造方法への転換にも寄与することが期待される。

担当研究者

教授 藤井 英俊、特任准教授 森貞 好昭(接合科学研究所)

キーワード

線形摩擦接合/組織制御/接合温度/硬度分布

応用分野

自動車構造体/ガスタービン/金型

参考URL

http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/~jthub/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2023(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。