研究

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エネルギー計画モデルの多面的な効率性評価

教授 森田 浩(情報科学研究科 情報数理学専攻)

  • 理工情報系
  • 情報科学研究科

研究の概要

本研究では、多目的最適化と包絡分析法 DEA による効率性測定の考え方を組み合わせ、エネルギー要件と不確実性シナリオを考慮した最も効率的なエネルギーミックスを決定するフレームワークを提供している。提案モデルでは、エネルギー需要、コスト、環境への影響、セキュリティ、社会的影響、および社会的利益に関連する要件を満たすための多目的関数が用いられ、スラック規準型尺度を用いた効率性分析によって、生成された代替案から最適なエネルギーミックスを決定する方法を示している。不確実性シナリオを考慮しつつ、発電量、直接雇用、再生可能エネルギー発電量を最大化し、経済的コスト、二酸化炭素排出量、社会的コスト、発電所依存度を最小化するようなエネルギーミックスを求めている。

研究の背景と結果

エネルギーを取り巻く環境は、脱炭素化やエネルギー資源の確保、再生可能エネルギーの導入など、不確実性がますます高まっている。
将来の電力の安定供給を考えるにあたっては、さまざまな観点から議論がされて、合意形成がなされることが必要である。タイにおける電力開発計画に対するケースステディがあり、化石燃料による発電と再生可能エネルギーによる発電に対するさまざまなタイプの発電所が考慮された実証研究が行われている。本研究では、その分析に提案モデルを適用することでその有効性を検証し、さまざまなエネルギー政策と不確実性シナリオに対する最適なエネルギーミックスの範囲を示すことを目指した。第1段階の効率性測定ではさまざまなエネルギーミックス間の効率性スコアの差異は大きくなかったものの、第2段階におけるグループ別の効率性測定を行うことによって評価が可能となった。
そこでは、需要シナリオ毎にグループ化した後で効率性測定を行ったが、まず環境要因を優先指標として最適化し、次に社会的損害、コストを考慮する辞書式最適化を行った。その結果、すべての需要シナリオで加重平均効率性スコアが最も高いものを示すことができ、二酸化炭素排出量の31.41%削減と発電所タイプ依存度の25.59%削減をはじめとした大幅な改善に貢献できることが示された。また、総雇用の25.73%と再生可能エネルギー割合の47.39%を増加させることができ、その代償としてのコストの増加は8.94%と社会的コストの増加は13.89%であり、そのトレードオフは大きくはないことも明らかとなった。

図1 不確実性シナリオの下での7つの方針に対する最適エネルギーミックス
図2 需要シナリオによって分類した効率性スコアの変動

研究の意義と将来展望

本研究では、2段階の効率性測定方法が用いられており、多目的関数を適用してあらゆる可能性を考えた第1段階の結果から、グループ別の効率性測定による第2段階において最適なエネルギーミックスを決定している。これは、一連の要件と不確実性のシナリオの下での定量的な評価を示すものであり、適切なエネルギー政策を立案する際に有効となるものである。

担当研究者

教授 森田 浩(情報科学研究科 情報数理学専攻)

キーワード

多目的最適化/効率性測定/エネルギー計画/最適なエネルギーミックス/スラック規準型尺度

応用分野

エネルギー政策/効率性測定

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2023(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。