研究 (Research)

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スマートビルディング向けエネルギーマネジメント技術 (Energy management technology for smart building)

准教授 谷口 一徹(情報科学研究科 情報システム工学専攻) TANIGUCHI Ittetsu(Graduate School of Information Science and Technology)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 情報科学研究科 (Graduate School of Information Science and Technology)

English Information

研究の概要

建物は社会全体のエネルギー消費のうち大きな割合を占めており、その省エネが重要な課題となっています。近年の建物には創エネのための太陽光パネルや蓄エネのための蓄電池が設置されることも多く、空調やスマート家電などのさまざまなエネルギー消費機器も含めた建物全体を管理するエネルギーマネジメント技術の重要性が高まっています。居住者の利便性や快適性を損なわずにエネルギー消費量を削減するためには、予測と最適化が重要なコア技術となります。太陽光パネルの発電量や電力需要が予測できれば、電気代を最小に抑える蓄電池の充放電スケジューリングが可能です。電力需要のピークとその時間帯が予測できれば、電力需要ピークを回避する運転計画に即座に変更することも可能です。我々の研究グループでは、このような予測と最適化に基づく包括的なエネルギーマネジメント技術を開発しています。
特に、深層学習を用いた電力価格や電力需要の予測技術、多数のエネルギー消費機器の運転計画を高速に求める最適化技術を開発しています。

研究の背景と結果

建物は我々の生活の基盤であり日々多くのエネルギーを消費しています。居住者の利便性や快適性を損なわずに建物のエネルギー消費量を削減するためには、近年普及している太陽光パネルや蓄電池に加え、空調、スマート家電などのエネルギー消費機器を適切に運用することが必要です。特に、太陽光パネルの発電量や居住者の行動パターン、電力価格などの予測情報を活用してシステム全体の最適化が必要です。
本研究では建築設備のスマート化を通した建物レベルの省エネを目的としており、そのための包括的なエネルギーマネジメント技術を開発しています。
建物に設置された蓄電池やエネルギー消費機器の運用を求めるスケジューリング問題は古くから研究されています。通常、空調やスマート家電などのエネルギー消費機器は数時間〜1日先までの計画を立てることが求められますが、太陽光パネルの発電量は秒単位で細かく変化し、蓄電池の振る舞いも秒単位の制御が必要です。これらを全て考慮したスケジューリング問題は求解に膨大な時間を要します。本研究では、複数の時間粒度でスケジューリングを階層的に行う手法を開発しました。それにより、一般的な手法と比較して10分程度の計算時間で48% 以上の電気代削減を実現しました。
電力需要や電力価格など時系列データを予測する技術は深層学習を用いて実現することが一般的です。通常、電力需要や電力価格の変動は激しく、この変動により予測精度が低下することが知られています。本研究では、深層学習の前処理として周波数解析を行うことで高精度に電力価格の時系列を予測する技術を開発し、世界最高精度の予測精度を達成しました。
我々の研究グループでは、このような予測と最適化に基づくエネルギーマネジメント技術を開発し、積極的に産業応用に向けたシステム実装や実証実験も進めています。

図1. 提案手法の概要
図2. 居住者の熱的快適性を考慮した空調のスケジューリング例
図3. 周波数解析と深層学習による電力価格予測

研究の意義と将来展望

このようなエネルギーマネジメント技術により、エネルギー消費量の「削減」だけでなく「調整」も可能となります。これにより新たなエネルギーサービスの実現にも貢献し、エネルギー分野の DX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引します。

担当研究者

准教授 谷口 一徹(情報科学研究科 情報システム工学専攻)

キーワード

スマートビルディング/エネルギーマネジメントシステム/蓄電池/スマート家電/太陽光エネルギー

応用分野

スマートビルディング/省エネルギー/DX

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2023(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。