研究 (Research)

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開口型血液脳関門ネットワークモデルの開発 (Development of blood brain barrier models with open networks)

教授 松崎 典弥(工学研究科 応用化学専攻) MATSUSAKI Michiya(Graduate School of Engineering)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 工学研究科・工学部 (Graduate School of Engineering, School of Engineering)

English Information

研究の概要

我々は、底面開口型血液脳関門(BBB)チューブネットワークをマイクロウェルに作製した。本 BBB モデルは分子量に依存して物質の透過を制御でき、受容体介在細胞輸送が評価可能な新しいヒト BBB モデルとして期待される。

研究の背景と結果

血液脳関門(BBB)は他の臓器血管と比較して高いバリア性を有しており、基本的に500Da 以上の分子はほぼ100%、低分子の98% を透過しない。これは、脳毛細血管内皮細胞(BMEC)の周囲を壁細胞(Pericyte: PC)が覆い、その外表にアストロサイト(Astrocyte: AC)の終足が接着した特殊な三次元ネットワーク構造に起因する。この細胞間相互作用により BMEC のタイトジャンクションと排出系トランスポーターが発達することで、物質の透過性を抑え、取り込んだ異物を積極的に排出する機構を有している。これが CNS 創薬を困難にしている大きな理由である。
物質が BBB を通過する経路として1)脂溶性物質による受動輸送、2)特定の物質を選択的に通す受容体介在経細胞輸送、3)イオンチャンネル、が知られており、近年注目されているのが2)容体介在経細胞輸送(Receptor-mediated transcytosis: RMT)である。RMT は、特定のタンパク質やペプチドを輸送するため、ペプチドや抗体、核酸医薬品などのニューモダリティを輸送できる可能性があり、様々な製薬企業のターゲットとなっている。しかし、RMT を評価できる in vitro ヒトモデルは存在せず、実験動物が主流となっているが、動物とヒトとの種差が課題である。そこで、RMT を評価可能な in vitro ヒトモデルの開発が急務の課題となっている。

研究の意義と将来展望

我々は、これまで報告してきた開口型毛細血管チューブネットワークの作製方法を改良することで、底面開口型血液脳関門(BBB)チューブネットワークを24ウェルインサート内部に作製した。インサート下部の培地に蛍光標識デキストランを添加すると、入り口から内部のネットワークに拡散する様子が共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)観察より確認された。また、低分子量体(4.4kDa)のデキストランを用いると一部透過する様子が観察されたが、高分子量体(500kDa)のデキストランではそのような漏れは観察されなかった。
つまり、分子量に依存して物質の透過を制御できることが明らかになった。本開口型 BBBチューブネットワークは、RMT を評価可能な新しいヒト BBB モデルとして期待される。

担当研究者

教授 松崎 典弥(工学研究科 応用化学専攻)

キーワード

血液脳関門モデル/受容体介在性細胞輸送/組織工学/ニューモダリティ

応用分野

医療・ヘルスケア/創薬

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2023(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。