研究 (Research)

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高活性・高温強度・高耐久性を兼ね備えた次世代合金ナノ粒子触媒 (Next-generation alloy nanoparticle catalyst with high activity, high temperature resistance, and high durability)

准教授 森 浩亮(工学研究科 マテリアル生産科学専攻) MORI Kohsuke (Graduate School of Engineering)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 工学研究科・工学部 (Graduate School of Engineering, School of Engineering)

English Information

研究の概要

ハイエントロピー合金(High Entropy Alloy)は、5種類以上の元素がほぼ当原子組成比で含まれ、単相の固溶体を形成する金属材料である。HEA では、i)ハイエントロピー効果、ii) 格子歪み効果、iii)低拡散効果、iv)カクテル効果なのどの核心的効果が知られており、従来の合金とは異なる高い比強度、破壊靭性、高延性、高温強度、耐食性を示す大変魅力的な金属材料である。しかしながら、簡便なナノ粒子合成法が確立されておらず、触媒材料としては全く未開拓である。我々は、触媒機能発現を目指したハイエントロピー合金のナノ粒子化法を確立し、さらに CO2水素化反応において特異な触媒活性、高い耐久性を示すことを見出した。

研究の背景と結果

金属ナノ粒子は様々な触媒反応に利用されるが、表面エネルギーが高いため、過酷な環境下では凝集や表面構造の変化が起こり失活する。この課題を克服するため、高い比強度、破壊靭性、高延性、高温強度、耐食性を示すハイエントロピー合金(HEA)に着目した。HEA は、5種類以上の元素がほぼ当原子組成比(5–35 wt%)で含まれ、単相の固溶体を形成する金属材料である。HEA を触媒材料として利用するためには、ナノ粒子化が必須である。しかしながら、これまでの報告では2000℃以上の瞬間加熱装置や、高温高圧装置が用いられており汎用性が低く、それゆえ触媒材料としての応用は未開拓であった。
これまで我々は、二酸化チタン(TiO2)表面の水素スピルオーバーを還元駆動力に利用すると、Ru-Ni や Rh-Cu などの熱力学的に非平衡な固溶体合金ナノ粒子が、水素還元というシンプルな手法で、しかも300℃ という低温で生成することを世界に先駆け報告してきた。今回はこの技術を応用すると、Co, Cu, Ni, Ru, Pd の5元素で構成される2ナノメートルの HEA ナノ粒子が TiO2表面に400℃で合成できることを発見した。
合成した HEA ナノ粒子は、二酸化炭素の資源化反応において、単一金属から成る既存の触媒より数倍優れた性能を示すだけでなく、400℃で長時間利用してもその粒子径は変化せず、高い耐久性を示した。さらに興味深いことに透過型電子顕微鏡を利用したその場実験において、電子線照射による knock-on ダメージに対しても安定であることが見出された。単一金属ナノ粒子はその表面エネルギーが高いため、過酷な環境下では凝集や表面構造の変化が起こり失活してしまうのに反し、HEA ナノ粒子では配置のエントロピーが大きいために、高温状態でも結晶相が熱力学的に安定化されたためと考えられる。

研究の意義と将来展望

ハイエントロピー合金ナノ粒子担持触媒は、過酷な環境下においても安定性が高く分離・回収の容易な粉末状であるなど、実用化触媒に不可欠な基盤要素を兼ね備えている。さらに、カクテル効果、遅い拡散効果が触媒活性やナノ粒子の構造安定性に起因していることを、理論計算を用いて証明しており学術的な意義も極めて高い。本件研究成果は、エネルギー資源の有効利用を目指した触媒分野のみならず、ナノテクノロジーを基盤とした先進的なマテリアルサイエンス分野へも多大な波及効果をもたらすことが期待される。

担当研究者

准教授 森 浩亮(工学研究科 マテリアル生産科学専攻)

キーワード

ナノ構造触媒/合金ナノ粒子/二酸化炭素資源化

応用分野

エネルギー資源変換/燃料電池/光機能材料の開発等

参考URL

https://www.eng.osaka-u.ac.jp/wp-content/uploads/2021/06/PR20210623_2.pdf

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2023(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。