研究 (Research)

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国際報道における注目度とその要因 (Determinants of world news coverage)

教授 Hawkins, Virgil(国際公共政策研究科) Hawkins Virgil(Osaka School of International Public Policy)

  • 人文学社会科学系 (Humanities and Social Sciences)
  • 国際公共政策研究科 (Osaka School of International Public Policy)

English Information

研究の概要

報道されない世界がある。報道される世界との差は何なのか。日本でもグローバル化が加速しているにもかかわらず、依然として国際報道量は少なく、報道のアジェンダとなる地域・国や、報道の対象となる事件・事象に見られる偏りが極めて大きい。国際報道において東アジアや欧米等の高所得国で発生した出来事は大きく取り上げられるのに対し、アフリカや中南米等の低所得国での出来事はほとんど取り上げられない。
そこで筆者が取り組んでいるのが、国際報道量および内容分析、ケーススタディにおけるプロセストレーシング等を通じ、国際報道が偏向する理由を解明し、報道機関による取捨選択のプロセスの背景にあるメカニズムを探る量的・質的研究である。

研究の背景と結果

近年、日本の政府、大学、企業、NGO 等が持続可能な開発目標(SDGs)に着目し、関連する取り組みや貢献について強調することが増大している。しかし、前向きなアピールとは裏腹に、現状のままでは目標の2030年までに SDGs 達成の見込みは絶望的なだけでなく、達成する方向にすら向かっていると言い難いのが現状である。
イメージと現実との差の背景には何があるのか。「誰1人取り残さない」という SDGs の理念にあるように、SDGs 達成は問題が最も集中する低所得国における取り組みにかかっているが、日本での SDGs に対する捉え方は、日本国内での問題や解決策が中心となっており、こうした低所得国における問題について焦点が当てられていないのが現状だ。
イメージと現実の差を埋めるためには、世界の現状把握および世界に対する理解促進のための情報環境の構築が鍵となってくる。その情報環境の構築の大きな役割を担うのが、報道である。しかし、日本の大手メディアによる国際報道は報道全体の10%前後にとどまっている。この少ない報道量の大部分を占めるのが、東アジアや欧米に関する報道であり、アフリカと中南米に関する報道を合算しても国際報道全体の5%程度となっている。さらにその報道内容を見ると、日本政府や経済的エリートが提供する議題を追う傾向にあり、報道機関自らが世界が抱える問題に着目し、独自の分析または問題提起するものではない場合が多い。
世界と世界が抱える問題を包括的かつ客観的に把握できる情報環境の実現を目的とし、2016年に立ち上げたのがメディア研究機関、Global News View (GNV)である。報道されない世界について分析するグローバル・ビュー(Global View)、日本の国際報道分析を行うニュース・ビュー(News View)の分析記事を週に一度発信するほか、隔週でポッドキャストの配信も行う。また、2015年以降の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の国際報道データもマンスリーレポートとして同サイトで発信している。SNS 発信も活発に行なっている。2022年11月現在、GNV の1日の平均閲覧数は3千を超える。

研究の意義と将来展望

国際報道に見る「格差」は世界のためにも日本のためにもならない。世界を包括的かつ客観的に捉えることができなければ、人類が抱える深刻な問題を正確に捉えることも、解決のための資金・人的資源を動員することもできない。また、日本政府や企業の立場に鑑みても、真の利益やリスクを正確に把握できにくくなる。こうした状況の改善策を見出すために、国際報道が偏る要因を解明することは重要となろう。本研究で立ち上げたウェブサイト『Global News View(GNV)』を通じて国際報道分析等を日々発信することにより、問題解決に向けた試みを行なっている。

担当研究者

教授 Hawkins, Virgil(国際公共政策研究科)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2013-1/201312_04/

キーワード

国際報道/メディア/コミュニケーション/国際政治

応用分野

国際報道/国際政治

参考URL

https://globalnewsview.org/

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2023(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。