研究 (Research)

最終更新日:

要時生成型亜塩素酸イオン水溶液MA-Tを用いた感染症の制御

薬学研究科

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 薬学研究科・薬学部 (Graduate School of Pharmaceutical Sciences, School of Pharmaceutical Sciences)

取組要旨

多剤耐性菌が問題となっている黄色ブドウ球菌やアシネトバクターなどの細菌のほか、SARS, MERS, SARS-CoV-2などのウイルスに対しても有効な要時生成型亜塩素酸イオン水溶液(MA-T®; Matching Transformation System®の略)を活用した様々な研究をJSTのOPERA(令和1年6月採択)の支援で実施し、誤飲した場合の安全性試験(toxicology, 2022) や、ヒトの細胞モデルを用いた安全性試験等も実施した。
・吹田市保健局と連携し、SARS-CoV-2の感染者を対象に市販のMA-T入りの液剤による含嗽効果(非介入)も確認。口腔内のウイルス力価が一時的にゼロになることを確認した。
・日本MA-T工業会の支援で2つの社会実験(オペラ(https://matjapan.jp/assets/files/20220415.pdf)やモンゴルの学校での利用(https://acenet-inc.jp/files/20220406.pdf))が実施された。
・要介護者向けに口腔ケア用ジェルも開発して上市されると同時に、要介護の高齢者を対象に口腔ケアを実施し、口腔内の細菌数の減少や口腔内の湿度の改善が行われ、日和見感染症や肺炎の予防に対する有効性を示した(BMC Oral Health, 2023)。
・一方、次亜塩素酸水が有機物にも反応して適切な消毒ができないのに対して、MA-Tは有効に働き、有機物の有無に関わらず細菌類を死滅できることを実証した(BPB Reports, 2023)。
・水害等の災害時に特に有効であり、他の消毒剤と比べても有効性が高いことが判明した(以下の表)。

研究成果・インパクト

歯学研究科では新型コロナウイルスの侵入経路であるACE2受容体が肺よりも唾液腺の導管上皮細胞に多く存在することを実証すると共に、唾液中のウイルスが誤嚥等で肺に感染すると重症化するという仮説を提唱(Oral Science Int, 2020)し、NIHのグループもこれを支持する論文を報告した(Nature Medicine, 2021)。
SARS-CoV-2のみならず、日和見感染症や肺炎に対し、少人数ながら市販のMA-T入りの液剤による含嗽や口腔ケアを実施し、口腔内のウイルスの力価や細菌数の減少を確認した(BMC Oral Health, 2023)。
今後の臨床研究による効果の検証が期待されている。

担当研究者

井上豪・土井健史・辻川和丈・近藤昌夫・深田宗一朗・岡田文裕・藤田郁尚・齋藤かおり・安達宏昭・柴田剛克・古西清司・湯元昇・中村努・中田裕久・田畑彩生(薬)、朝野和典・明田幸宏・濱口重人・嶋津岳士・廣瀬智也・吉村旬平・金田眞理・竹田潔・香山尚子(医)、阪井丘芳・十河基文・浦川龍太・林 美加子・高橋雄介・前園葉月(歯)、金田安史(OI)、松浦善治・渡辺登喜子・田鍬修平・安齋 樹(微)、山本仁(安管)、田和正裕(SSI)

備考

令和2年9月28日には、国土強靭化基本計画の下で設立された一般社団法人レジリエンス推進協議会が主導でMA-T産業創造戦略会議が設置されるとともに、MA-Tの溶液を製造しているアース製薬株式会社が第1回STOP感染症大賞を受賞した.また、MA-Tを用いた様々な研究開発がJATのOPERAの支援で実施されているが、その応用展開が大きく注目されている(Yahoo!のトップニュースに掲載; https://news.yahoo.co.jp/byline/yamaguchikazuomi/20200929-00200646/

キーワード

除菌・消臭剤/MA-T/要時生成型亜塩素酸ナトリウム水溶液/口腔ケア/手指消毒/感染制御/臨床開発

応用分野

噴霧可能な消毒液/清拭シートの開発/口腔ケア商品(マウスウォッシュ、口腔ケア用ジェル)/熱傷患者への皮膚の消毒剤/潰瘍・褥瘡などへの対策/医薬品(癌、潰瘍性大腸炎対策)