研究 (Research)

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成熟した都市圏における生活行動圏のコンパクト化に向けた研究 (How can we restructure the urban structure by downsizing of activity space in daily life)

助教 青木 嵩(工学研究科 地球総合工学専攻) AOKI Takashi (Graduate School of Engineering)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 工学研究科・工学部 (Graduate School of Engineering, School of Engineering)

English Information

研究の概要

本一連の研究は、成熟した都市圏を再編するにあたり、主要公共交通機関に沿った生活行動圏のコンパクト化の促進とその方策を検討することを目的としている。そのうえで、当該研究の第一段階として、生活行動圏のコンパクト化を測る指標の開発と京阪神都市圏を対象とした鉄道駅勢圏における生活行動圏のコンパクト性の実態分析を行っている。日常の生活行動では、通勤や購買行動、余暇活動など行動目的が多岐にわたる。故に本稿では、これら各目的の集中傾向を測るために、生活行動目的別トリップの集積率に基づく指標を提案した。

研究の背景と結果

我が国は2008年より人口減少社会へと転じており、大都市圏も含めて今後の人口規模に見合った都市構造への再編が求められている。また世界的に見ても持続的な開発に注目が集まっており、成熟した都市圏をコンパクト化していくことが重要となる。この時、居住地を集約させることに加えて、生活行動圏域もコンパクトに収めていかなくてはならない。しかしながら人口減少社会において開発圧力の低下や財源が限られる現状では、全ての居住地において多様な生活行動目的に対応した機能を等しく付随させていくことは難しい。故に公共交通機関などを軸として、複数の地域を移動しながら目的に応じた相互利用のできる都市構造が必要となる。
これまで居住地のコンパクト化については議論が多く展開されてきた。一方で生活行動圏、すなわち多様な生活行動における目的地のコンパクト化については道半ばであり、今後の再編可能性を議論するためにも現状を明らかにする必要がある。本一連の研究は、「主要公共交通機関に沿った生活行動圏域のコンパクト化の促進」に主眼を置き、その第一段階として①生活行動圏のコンパクト化を測る指標の開発と②各鉄道駅勢圏における生活行動目的の集積性の分析を行った。
生活行動圏域のコンパクト化を測る指標として、パーソントリップデータを用いた目的別のトリップ数に着目した。そして鉄道駅勢圏における目的別トリップ集積率と標準偏差を組み合わせて生活行動圏の広がりを類型化する手法を見出した。図1は、京阪神都市圏の市町村を対象に得られた類型を色づけたものである。ここでは第4象限(4thQuadrant)に属するものが最も生活圏の鉄道駅周辺へのコンパクト化が進む地域である。そのうえで鉄道駅勢圏に集まる生活行動目的の組み合わせを勘案しており、図2は、その生活行動目的同士の主な組み合わせを表しており、京阪神都市圏内の3割強の鉄道駅は、その駅勢圏において3~4つの生活行動の目的地が集積していることが確認された。

研究の意義と将来展望

本一連の研究の意義として、持続可能性な都市構造への再編に資する知見を提供することである。成熟した都市圏をコンパクト化するにあたり、居住地に加えて生活行動圏域も集約する必要がある。このコンパクト性を測る指標がこれまではトリップ総数から測られていたが、それではオフィス街などよりトリップ数の多い生活行動目的が集中する場所に偏った結果になる。
本稿では、生活行動目的別のトリップ集積から見た指標を提示することでこの点をクリアにした。今後の方針としては、各国のコンパクト化施策との関係や、世代別のトリップ集積を分析し、居住地と生活行動圏のコンパクト性を両立した都市構造への再編計画を検討する。

担当研究者

助教 青木 嵩(工学研究科 地球総合工学専攻)

キーワード

コンパクトシティ/都市計画/生活行動圏

応用分野

都市計画/都市政策

参考URL

https://researchmap.jp/takashi_aoki

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2024(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。