研究 (Research)

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アルケンの立体特異的シアノ二官能基化 (Stereospecific cyanodifunctionalization of alkenes )

助教 清川 謙介(工学研究科 応用化学専攻) KIYOKAWA Kensuke (Graduate School of Engineering)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 工学研究科・工学部 (Graduate School of Engineering, School of Engineering)

English Information

研究の概要

ホウ素ルイス酸であるトリスペンタフルオロフェニルボラン(B(C6F5)3)を触媒として活用し、アルケンに対してp-トルエンスルホニルシアニド(TsCN)を作用させることで、立体特異的なsynオキシシアノ化が進行することを見出した。また、臭化シアンを反応剤として用いることで立体特異的synブロモシアノ化が進行した。これらの開発したアルケンの立体特異的シアノ二官能基化により、入手容易なアルケンから有用なニトリルを一段階で効率的に合成可能である。

研究の背景と結果

有機化合物に官能基を導入する手法は、医薬品や機能性材料などの官能性化合物を合成するための重要な手法である。シアノ基は、カルボキシル基やアミノ基など種々の官能基に変換可能な有用な官能基であり、そのため有機化合物に対してシアノ基を導入する手法の開発が盛んに研究されている。有機合成において入手容易な原料であるアルケンを基質として用いた、シアノ基の導入を伴う炭素−炭素二重結合の二官能基化は、有用な合成中間体となり得る化合物群を一段階で合成できるため重要な変換反応である。
本研究では、ホウ素ルイス酸であるトリスペンタフルオロフェニルボラン (B(C6F5)3) を触媒として利用し、アルケンに対してp– トルエンスルホニルシアニド(TsCN)を作用させることで、立体特異的な syn オキシシノア化が進行し、βヒドロキシニトリルが得られることを見出した。アルケンを出発原料とするβヒドロキシニトリル合成は、これまでに種々の手法が開発されているが、複数の工程や、極高温などの厳しい反応条件が必要であることから実用性に課題が残されていた。本研究で開発した反応は一段階の反応であり、様々な官能基を有する幅広い基質に対して適用可能であることから従来法を凌駕する手法である。さらに、臭化シアンを反応剤として作用させることで立体特異的なsynブロモシアノ化が進行することを見出した。また、各種スペクトル解析や DFT 計算を駆使して、 B(C6F5)3 が遷移状態の安定化に効果的に寄与する立体特異的なオキシシアノ化の機構を解明した。
本研究により、反応性の高いアルキンへの反応や分子内反応に限定されていたシアノ二官能基化法の適用範囲を格段に押し拡げることができた。開発した手法を用いることで、有用なニトリルを入手容易なアルケンから一段階で効率的に合成可能である。

研究の意義と将来展望

本成果により、従来、反応性の高いアルキンへの反応や分子内反応に限定されていたシアノ二官能基化法の適用範囲を格段に押し拡げることができた。また、開発した反応で合成した化合物は、合成中間体として有用なβヒドロキシニトリルおよびβブロモニトリルであり、医薬品や機能性材料の合成における強力なツールとなる。

担当研究者

助教 清川 謙介(工学研究科 応用化学専攻)

キーワード

有機合成/触媒反応/官能性化合物/ニトリル

応用分野

有機合成/創薬

参考URL

http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/~minakata-lab/
https://researchmap.jp/kensukekiyokawa

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2024(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。