研究 (Research)
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任意の組成比をもつ共結晶性有機材料の開発 (Development of co-crystalline organic materials with arbitrary composition ratio)
教授 久木 一朗、助教 桶谷 龍成(基礎工学研究科 物質創成専攻) HISAKI Ichiro , OKETANI Ryusei (Graduate School of Engineering Science)
研究の概要
複数の成分が不定比で混ざり合うことにより構築された多孔質結晶性材料が注目されている。混合比の掃引による機能の段階的な調整が可能であり、さらには新たな機能の創発も期待されている。しかし、設計指針の確立に必要な精密な結晶構造の情報を取得することは容易ではない。
本研究では、2種類の構成分子を任意の割合で共結晶化することにより、非化学量論的組成を有する結晶性多孔質結晶を構築した。単結晶 X 線構造解析により結晶中の分子配列を解明するとともに両成分の組成比も決定した。さらに、単結晶を用いた顕微ラマン分光により、一粒の結晶中における各成分の分布の様子を明らかにした。
研究の背景と結果
複数の成分が様々な割合で混ざり合う不定比共結晶は、成分比による機能の調整や、場合によっては全く新しい機能の発現が期待できることから、材料科学において魅力的な系として認識されている。これまで、電荷移動相互作用、ハロゲン結合、水素結合などを利用して有機分子を共結晶化することにより、数多くの不定比共結晶が構築されてきた。しかし、再結晶の操作によって少量の不純物が排除されて化合物の純度が高くなることからもわかるように、有機分子のみを用いて任意の組成をもつ不定比共結晶を構築することは困難である。我々は、特に多孔質フレームワーク結晶に注目している。
これまでに、金属-有機複合構造体(MOF)の不定比共結晶フレームワークがいくつか報告されており、複数のリガンドを混合して構築した MOF は、単一のリガンドのみの MOF と比べて高い二酸化炭素吸着選択性を示すことを報告した。一方、可逆的な水素結合によって構築された水素結合性多孔質構造体((HOF)は未開拓であった。本研究では、ヘキサヒドロピレン骨格とピレン骨格をもつそれぞれのテトラカルボン酸誘導体を用いて、様々な組成比で成分が混ざり合いながらも明確な結晶構造をもつ不定比共結晶フレームワークの概念実証を行った。単結晶 X 線構造解析により結晶中の分子配列を解明するとともに両成分の組成比も決定した。さらに、単結晶を用いた顕微ラマン分光により、一粒の結晶中における各成分の分布の様子を明らかにした。
研究の意義と将来展望
複数の構成要素を混合して作成した結晶性の構造体は、混合比率による機能のファインチューニングが可能であるとともに、単一成分で形成さる構造体にはなかった機能が創発する可能性をも秘めているため、材料科学において重要な開発対象となっている。しかし一般的に有機分子を混合してもそれぞれの成分が別々の結晶を与えることが多い。これに関して我々は、水素結合などの分子間相互作用をうまく利用することによって任意で混合した単結晶性の有機材料を構築する指針を得た。
担当研究者
教授 久木 一朗、助教 桶谷 龍成(基礎工学研究科 物質創成専攻)
キーワード
不定比共結晶/混合結晶/多孔質材料
応用分野
機能有機材料/多孔質材料
参考URL
http://www.chem.es.osaka-u.ac.jp/mac/
https://researchmap.jp/Ichiro_Hisaki
https://researchmap.jp/ryuseioketani