研究

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深層学習を用いたてんかん脳磁図検査の自動化 (Automated neuromagnetic examination of epilepsy using deep learning )

招へい教授 平田 雅之、特任研究員(常勤) 朝井 都(医学系研究科 脳機能診断再建学共同研究講座) HIRATA Masayuki , ASAI Miyako (Graduate School of Medicine)

  • 医歯薬生命系
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻)

English Information

研究の概要

てんかんの脳磁図検査は、正確かつ、無侵襲にてんかんの場所を調べることができ、てんかん治療、特に手術の前の検査として重要である。しかしながら、てんかん波形の判読は難解なため、専門医が何時間もかけて解析する必要があり、性能が高いにもかかわらず、普及していない。
今回、研究グループは、新たに深層学習を用いててんかん波形判読システムを開発し、このシステムに専門医の判読パターンを学習させることで脳磁図検査を完全に自動化することに成功した。これまで長時間、解析に要していたが、本システムを利用することにより解析時間が不要となった。さらに標準的な医師の診断レベルに匹敵する性能を達成できた。

研究の背景と結果

脳磁図は脳の電気活動により生じる磁気を計測することにより、脳波より正確に脳活動を計測できる臨床検査法である。てんかんの脳磁図検査は、脳内でてんかんが生じている場所を無侵襲で脳波より正確に調べることができる。さらに、てんかん治療、特にてんかんの場所の正確な診断が必要な、てんかんの脳外科手術の前の検査として重要である。しかし、てんかん波形の判読は難解なため、これまでは専門医が何時間もかけて解析する必要があった。そのため、脳磁図は性能が高いにもかかわらず、一部の大学病院等にしか導入されておらず、普及していなかった。また、欧州の研究では解析に平均8時間も要するという報告があり、解析する医師にとっても大きな負担となっていた。
研究グループでは、株式会社リコーとの共同研究により、2種類の深層学習を組み合わせることで、単にてんかん波を検出するだけでなく、その時間と拡がりも正確に判読して、脳内のどこでてんかん活動が生じているかを完全に自動解析できるシステムを開発した。2種類の深層学習に、専門医が過去に解析した400以上の検査結果を学習させることにより、医師と同等の解析性能を達成することができた。さらに多施設での検査結果も学習させることにより、汎化性能を向上できた。これまで専門医が解析に何時間もの時間をかけていたが、この解析時間が不要になり、医師の負担が大幅に軽減されると期待できる。てんかん波の判読は難解なため、医師により解釈に差がでることが課題であるが、この手法を用いることにより、検査結果の質を均質化できることも利点である。

研究の意義と将来展望

本研究成果により、これまで解析に時間のかかっていたてんかん脳磁図検査が普及し、正確なてんかん診断が無侵襲でできるようになると期待される。また、この手法は脳磁図だけでなく、脳波判読の自動化にも応用が期待される。さらに、高齢者の認知能低下には、認知症だけでなく、てんかん発作が一定の割合で含まれていることが最近わかってきており、てんかんのスクリーニング等への応用も期待される。

担当研究者

招へい教授 平田 雅之、特任研究員(常勤) 朝井 都(医学系研究科 脳機能診断再建学共同研究講座)

キーワード

てんかん/脳磁図/深層学習/臨床検査

応用分野

てんかんの臨床検査

参考URL

https://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/ndr/
https://researchmap.jp/hiratty
https://researchmap.jp/hirapi105911784

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2024(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。