研究

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超柔軟・高透明エレクトロニクス創成の研究 (Research on creation of ultra-flexible and highly transparent electronics)

准教授 荒木 徹平(産業科学研究所 先進材料実装研究分野) ARAKI Teppei (SANKEN (The Institute of Scientific and Industrial Research))

  • 理工情報系
  • 産業科学研究所

English Information

研究の概要

本分野は、ナノ・マイクロ材料の設計により多機能な先進材料を創出し、新規電子デバイスの構築と、デバイス物性の発現機構の探究を行っています。また、新規電子デバイスを集積実装するフレキシブルエレクトロニクスに関する研究を推進し、地域社会の課題解決を導くための応用研究にも取り組んでいます。全く新しい価値やエレクトロニクス・システムを創造し、さらには社会システム変革(人 / 農業 / インフラ分野などのヘルスケア)を引き起こす機序を紐解いていくなど、異分野連携を積極的に推進しています。先進材料のエレクトロニクス実装から社会実装までの幅広い展開を興すことに挑戦しています。

研究の背景と結果

近年、ストレス関連疾患は国内でも400万人を超えるとされ、日常生活におけるストレスを定量化するためのウェアラブルセンサ技術が希求されています。本研究分野は、生体安全性のある導体材料を活用して医療材料と同等な低ノイズ電位信号(0.1 µV 程度)をワイヤレス計測できる薄膜 ・ 伸縮 ・ 透明導体を開発し、身体的にも精神的にもストレスフリーなセンサ技術を構築しつつあります。キー材料の一つである生体ドライ電極は、エラストマーと導電性高分子からなり、材料中でナノ〜マイクロメートルサイズの相分離構造を形成します。さらに、肉眼では見えない Ag/Au コアシェルナノワイヤからなる無機(金属)材料を配線材料に利用することで高導電かつ透明な伸縮配線を構築しました。生体ドライ電極と伸縮配線を積層した透明センサシートは、高い電荷移動度を示すため、医療材料と同等な低ノイズ電位計測を実現する重要なプローブとなります(Fig. 1)。また、上述した金属系や有機系のナノ材料を低ダメージで積層パターニングする技術を新たに開発し、「薄膜・柔軟・透明な電気化学トランジスタ」を開発しました(Fig. 2)。
他方面では、センサシートの貼り付けという簡便な工程のみで、オンサイトな水溶液濃度計測に成功しました(Fig. 3)。溶媒自身から発せられる広帯域な赤外線放射現象と、それに対する溶質での局所的な吸収に着目することで、サンプル非採取かつラベルフリーな液質計測が可能となりました。この液質計測には、研究グループが併せて新規に開発した高感度・広帯域かつストレッチャブルな薄膜状の光センサシートを用いています。植物や塩ビパイプ、蛇腹管、ゴムチューブといった柔らかい素材の液体配管にぴったりと貼り付けることができ、液体の流動性による配管の膨張・収縮・曲げ等の変形に対しても安定して追従可能です。ユビキタスな水質検査に資する基盤技術の実証という本研究成果は、将来、インフラや農業などのセーフティネットの構築に貢献できると期待されます。

研究の意義と将来展望

フレキシブル・ハイブリッド・エレクトロニクス(FHE)に必要な印刷配線板を多機能化・高性能化する研究開発を通じて、人 / 農業/ インフラ分野にむけたヘルスケアセンサシステムへの応用研究を行っております。
特に、有機・無機ナノ材料を中心とする伸縮導体材料を、有機デバイスへ集積実装することで、薄膜・柔軟・透明なシート型センサの構築を目指してます。人肌のような柔軟性や、水のような透明性を発現し、専門家でなくても明確に観察をすることが可能な電子デバイスの開発を行うことにより、生活に溶け込む次世代パーソナルセンサの基盤技術を構築しています。

担当研究者

准教授 荒木 徹平(産業科学研究所 先進材料実装研究分野)

キーワード

ナノ・マイクロ材料/フレキシブル・エレクトロニクス実装/センサシステム

応用分野

次世代ヘルスケア/農業IoT/建設テック

参考URL

https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/organization/srp/srp_02_05/
https://researchmap.jp/teppei_araki

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2024(未来社会共創を目指す)より抜粋したものです。