研究 (Research)
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ナノ粒子をより安全に設計するための新手法 ―ナノ粒子の安全性向上への貢献に期待― (Evidence-based prediction of cellular toxicity for amorphous silica nanoparticles)
大学院生 Martin (薬学研究科)、助教 渡邉 怜子、教授 水口 賢司(蛋白質研究所 計算生物学研究室) Doctoral Student Martin (Graduate School of Pharmaceutical Sciences) , WATANABE Reiko , MIZUGUCHI Kenji (Institute for Protein Research)
研究の概要
文献データマイニング及び機械学習を組み合わせ、ナノ粒子の一種であるナノシリカをより安全に設計するための人工知能(AI)を用いた新しい手法を確立した。本研究で確立した手法は、様々な産業分野におけるより安全なナノ粒子材料の開発に貢献することが期待される。
研究の背景と結果
PubMed には昨年のナノ材料分野だけで34,000件の論文が登録されており、科学文献の指数関数的な増加は生成される知識の膨大さを表している。この情報の急増は、一個人が効率的に読み包括的に理解する能力を既に超えていると言える。この豊富な文献の可能性をナノ材料分野に活用するために、安全で機能的なナノ粒子設計プロセスを大幅に加速できる強力なツールとして、AI が浮上している。
我々のグループは、直径100ナノメートル以下のナノ粒子の一種であるナノシリカ(SiO2-NP)をより安全に設計するために、AI を用いた新しい手法を確立した。100以上の科学論文から慎重に情報を収集し、高度な AI アルゴリズム(CatBoost)を活用することで、文献データマイニングと機械学習を組み合わせたナノシリカの安全性を評価する汎用的なin silico予測モデルを確立した。この研究により、濃度、血清の有無、サイズ、暴露時間、表面特性など、ナノシリカの安全性に影響を与えるいくつかの重要な要因が明らかとなり、ナノシリカの表面を修飾し、低濃度で使用することで、その安全性を大幅に改善できることが示された。
研究の意義と将来展望
ナノ粒子は化粧品、塗料、繊維、電子機器などに幅広く利用されているが、従来の材料とは異なる独特の形状や性質ゆえに安全性を懸念する指摘がある。しかし、ナノ粒子が細胞等に与える潜在的な影響を予測することが難しいのが現状だった。AI を用いた新たなエビデンスに基づく手法を確立することで、細胞毒性のあるナノ粒子と細胞毒性のないナノ粒子を区別することが可能となった。
ナノ粒子の安全性の向上は、ナノ粒子の日常的な使用に対する消費者の信頼を高めることに繋がる。文献デーマイニングによるナノ粒子に関する知見の蓄積を通じて、将来はがん細胞に対する選択性を持つなどの機能性ナノ粒子の発見を目的としたin silicoスクリーニングへの応用も期待される。
担当研究者
大学院生 Martin (薬学研究科)、助教 渡邉 怜子、教授 水口 賢司(蛋白質研究所 計算生物学研究室)
キーワード
人工知能(AI)/データマイニング/ナノ粒子/毒性
応用分野
医療・ヘルスケア/創薬
参考URL
https://mizuguchilab.org/index.html
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230531_1
https://www.phs.osaka-u.ac.jp/researchNews/newsDetail.php?id=16
http://www.protein.osaka-u.ac.jp/achievements/20230531/
https://www.nibiohn.go.jp/information/nibio/2023/06/008582.html
https://mizuguchilab.org/index.html
https://researchmap.jp/martinj
https://researchmap.jp/ozkrk
https://researchmap.jp/kenji_mizuguchi