研究 (Research)
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持続可能な地域のためのデータベース構築 (Building a database for sustainable communities)
教授 上須 道徳(経済学研究科 経済学専攻) UWASU Michinori (Graduate School of Economics)
研究の概要
本研究プロジェクトは、自治会や集落レベルのデータベース(地域データベース)を構築、地域関係者による熟議のための支援ツールとして活用し、地域の自治能力の向上を図ることを目的とします。また、地域データベースの情報を解析することで地域の課題や特性について客観的な情報・知見を抽出し、地元自治体や関係者に対し政策 / 施策のための提案を行います。これら地域関係者による知見蓄積の流れを「地域主義モデル」として提案します。
研究の背景と結果
日本社会は人類が経験したことのないような速さで人口減少・少子高齢化が進んでおり、さらに先進国の中では類を見ないほどの首都圏一極集中が起こっています。その裏返しとして、地方や地域経済の衰退、コミュニティの喪失が進んでいます。これまで政府による様々な地域活性化のための政策が実施され膨大な予算も投入されてきましたが、状況は改善していません。
本プロジェクトでは、これまでの東京が主導する方法では地方再生は構造的にできないという作業仮設の下、1970年代に経済学者・玉野井芳夫が唱えた「地域主義」(=地域の自律性、自治)を促進させるための実践的学際的方法論を提案することを目的とします。
具体的には、滋賀県高島市や奈良県吉野郡十津川村をフィールドに集落規模での地域情報のデータベースを構築し(図1)、客観的情報を踏まえながら地域住民と外部者が地域の現状について熟議を行うプロセスの枠組みを実践し、その有効性を検証することを行います(図2)。
これまでに滋賀県高島市では204つある自治体・集落を対象に地域資源を評価し、地域データベースを構築しました。まず、地域データの解析からは、地域特性や課題を明らかにすることができます。例えば、各自治体が抱える課題の種類(例えば、森林が荒れている、買い物の移動に困っている、など)や深刻度を測ることができました。さらに、統計解析の結果、地域の社会関係資本(住民間のつながりや信頼)が大きいほど、ある種の課題の深刻度が軽減されることがわかっています。この結果は地域の利便性や人口構成の影響を取り除いた上でも成り立つようです。
現在は、社会経済の状況が異なる奈良県十津川村でも地域データベースの構築を開始しています。今後は、データベースの充実と解析を進めると同時に、地域データを支援ツールとした一連のワークショップを実施し、地域の理解度を深めたり将来への展望について協議したりすることが地域の自治や自律性にどのような影響を与えるのか、検証していく予定です。
研究の意義と将来展望
地域住民や関係者は地域の課題や潜在的に持っている地域の価値の理解を客観的に理解したり、それについて話し合ったりする機会がありません。また、自治会や集落といった地域の人間関係が生活に大きな影響を与える空間レベルでのデータベースも構築する必要があります。
地域データベースを支援ツールとした自治能力を喚起する実践的なモデルを構築することで日本や地域社会が抱える課題解決の道筋につなげたいと考えています。
担当研究者
教授 上須 道徳(経済学研究科 経済学専攻)
キーワード
地域資源評価/持続性/共創
応用分野
地域づくり/公共政策/住民参加
参考URL
https://sites.google.com/view/michinori-uwasu-hp/home
https://researchmap.jp/m_uwasu