研究 (Research)
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軽量構造における異材摩擦撹拌接合技術の可視化研究 (Visualization study on dissimilar Friction Stir Welding (FSW) technology for lightweight structural manufacturing)
特任講師 ゲン ペイハオ、教授 麻 寧緒(接合科学研究所 機能評価研究部門) GENG Peihao , MA Ninshu (Joining and Welding Research Institute)
研究の概要
異材摩擦攪拌(FSW)の固相接合条件を適正化し、接合品質を向上するためには、FSW 過程における発熱・熱伝導・熱伝達と異材界面の塑性流動を可視化し、接合メカニズムを解明することは、極めて重要である。
本研究では、Al 合金/CFRTP、Al 合金/ 高張力鋼を対象とした異材FSW 接合プロセスに対して、高度な数値シミュレーションモデルを開発し、接合現象を再現すると共に、接合部のマイクロ組織と機械的特性の相関関係を明らかにした。
研究の背景と結果
FSW は、軽量構造の製造に適用できる革新的な固相接合技術である。異種材料FSW 継手の性能は、接合界面の組織に決定される。接合界面の組織は、接合過程における摩擦発熱、塑性流動、熱履歴および応力ひずみの履歴によって変化する。これまで、接合領域の熱発生や塑性流動および熱・力学現象の可視化による定量評価は不十分であった。
Al 合金とCFRTP の摩擦攪拌スポット接合の継手強度を向上するため、プローブ無しの3種類接合ツール(フラットツール、凹型ツール、環状ツール)を新たに設計し、接合界面の温度分布を数値解析で可視化し、接合界面の組織、継手強度および破壊形態を実験で調査した。フラットツールの場合、多数の微細空洞欠陥が存在するため、接合部のせん断強度が低かった。一方、凹型ツールと環状ツールでは、発熱分布を分散させ、接合領域の温度分布がより均一になり、接合品質を向上した。その中、凹型接合ツールを用いるAl/CFRTP の摩擦攪拌スポット部における均一温度の接合面積が大きく、接合継手のせん断強度が最も高い。
Al/ 鋼の重ね摩擦撹拌接合に関する研究では、数値シミュレーションの可視化解析により、接合中の塑性流動と接合ツールの回転速度との定量関係を明らかにした。回転速度を増加させると、広範囲の塑性流動が激しくなり、過熱現象が生じる。回転速度が低い場合、Al が鋼材への移動は不十分になり、ボイドや重ね合わせ界面の未溶着欠陥が発生した。回転速度の上昇に伴い、ピーク温度は、アルミニウム合金攪拌ゾーンから鋼板側の攪拌ゾーンに遷移した。さらに高回転数でのプローブ下部の温度はAl 合金の凝固温度に近づき、金属間化合物層が厚くなり、界面強度を著しく低下させた。本研究により適正な回転速度の範囲が推定できた。
研究の意義と将来展望
数値解析手法と実験測定技術を活用して接合メカニズムを解明し、異材FSW 接合条件を適正化することにより、接合継手の性能向上を図る。さらに本技術の適用により輸送機器の構造軽量化の接合課題を解決し、製造時や使用時のエネルギー消費量を低減し、SDGsに貢献する。
担当研究者
特任講師 ゲン ペイハオ、教授 麻 寧緒(接合科学研究所 機能評価研究部門)
キーワード
摩擦撹拌接合/異種接合/軽量合金/数値シミュレーション
参考URL
https://researchmap.jp/phgeng
https://researchmap.jp/ma.ninshu