研究

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環境をめぐる権利の拡大に応じた社会システムの検討

大久保 規子(法学研究科)、松本 和彦(高等司法研究科)ほか15名、あおぞら財団

  • 人文学社会科学系
  • 法学研究科・法学部

取組要旨

現在、私たちは気候危機や生物多様性の危機をはじめ、地球規模のさまざまな環境問題に直面しています。洪水、猛暑等の被害が深刻化するにつれて、環境問題は人権問題であるという認識が広がり、国連に加盟している3分の2以上の国が環境権を認めるに至っています。また、現在の世代だけではなく、将来世代の権利や自然の権利を認める国も現れています。「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030アジェンダ」は、すべての人々の人権の実現を掲げ、実効的な法の支配の重要性を強調しています。SDGsの多くの目標は環境に関連していますが、情報公開、参加、司法アクセスの保障等を掲げる目標16の推進は、持続可能な発展と不可分のガバナンスの原則を示しており、すべての目標の基礎となるものです。
本研究では、「自然の権利の理論と制度」(科研基盤A)及び「タイにおけるコミュニティ参加型水・森林管理法の執行強化に関する制度的・実態的研究」(科研・国際共同B)の支援を受けて、環境政策に参加する権利も含め、環境に関する多様な権利の体系化を目指すとともに、地域に根ざした方法で環境と発展の統合を推進し、政策の決定方法や訴訟制度も含め、ガバナンスの改革の方向性を示すために、法学、社会学、経済学、倫理学等の研究者による超域的・国際的な研究を進めています。

研究成果・インパクト

本研究では、ラテンアメリカ、東南・南アジアなど、従来日本の環境法研究の蓄積が少ない地域において、現地の研究者、弁護士、裁判官、NGO等の協力を得て法制度及びその実施状況に関するフィールド調査を実施してきました。これにより、環境をめぐる新たな権利の背景、その意義及び課題が明らかになりつつあります。同じラテンアメリカでも、例えば、エクアドルとボリビアでは法制度や問題状況が異なり、十把一絡げに語ることはできません。
同時に、地域の歴史的文化と環境は密接な関係にあり、従来の人間中心の考え方では現在の環境危機を乗り越えることはできないという認識は共通しています。また、状況は違っても、各国のグッドプラクティスの中には、相互に参照・適用可能なことがあることもわかってきました。本研究では、アジアの研究拠点のみならず、ラテンアメリカ等、他地域との国際比較研究のハブを形成すべく、さらなる取組みを続けていきます。

担当研究者

大久保 規子(法学研究科)、共同研究者:松本 和彦(高等司法研究科)、原 圭史郞(工学研究科)、礒野 弥生(東京経済大学・名誉教授)、井上 真(早稲田大学)、大塚 健司(アジア経済研究所)、大塚 直(早稲田大学)、高村 ゆかり(東京大学)、鳥谷部 壤(摂南大学)、柳 憲一郎(明治大学・名誉教授)、山下 英俊(一橋大学)、伊達 浩憲(龍谷大学)、寺内 大左(筑波大学)、百村 帝彦(九州大学)、藤井 絋司(千葉商科大学)、二見 絵里子(東京経済大学)、渡辺 理和(甲南大学・非常勤講師)、あおぞら財団

キーワード

環境権,参加原則,自然の権利

応用分野

公法学,新領域法学