研究 (Research)

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途上国の知的財産権保護強化と貿易自由化の世界経済への影響

祝迫 達郎(経済学研究科)

  • 人文学社会科学系 (Humanities and Social Sciences)
  • 経済学研究科・経済学部 (Graduate School of Economics, School of Economics)

取組要旨

1994年のTRIPS協定の締結以来、先進国だけでなく途上国でも知的財産権保護の強化が求められている。またWTOは関税など貿易障壁をなくすことを目標としている。これら途上国の知的財産権保護の強化や貿易自由化は世界的な社会的課題と言える。本研究は、先進国と途上国からなる動学的南北モデルを用いて途上国の知的財産権保護強化や2国間貿易自由化の2国の経済、厚生への影響を分析している。結果として途上国の知的財産権保護の強化は途上国への直接投資など技術移転を加速させ途上国の国内生産を増加し、その結果労働賃金を上昇させ先進国との賃金格差を縮小することを示している。先進国のイノベーションも活性化することも示しており、途上国の知的財産権保護強化が途上国国内だけでなく世界的な産業と技術革新の基盤形成になることが言える。また2国間の貿易自由化(関税引き下げ)も、途上国への直接投資を増加させ生産を増加させ、先進国のイノベーションを促進し、両国の厚生にプラスになる可能性があることが言える。

研究成果・インパクト

途上国の知的財産権保護の強化は先進国企業の利潤を高めイノベーションを促進するが、途上国には負の影響が大きいと思われていた。本研究の結果から、途上国の知的財産権保護強化は先進国から途上国への技術移転を促し生産・雇用を増加し賃金を高め南北間賃金格差を縮小し、途上国にも大きい便益があることが言える(目標08, 09,10)。また本研究は関税引き下げなど貿易自由化も両国の厚生を改善する可能性があることを示している(目標03)。これら本研究の成果は、世界的な社会的課題である途上国の知的財産権保護強化や貿易自由化が望ましいことを理論的に示しており、これらの課題が先進国・途上国のパートナーシップで達成すべき課題であることを示している(目標17)。

担当研究者

祝迫 達郎(経済学研究科)

キーワード

経済成長、知的財産権保護、貿易自由化、研究開発、技術移転、海外直接投資、南北賃金格差

応用分野

マクロ経済学、経済成長、国際経済