研究 (Research)

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WT1標的癌免疫療法

尾路 祐介、杉山 治夫、岡 芳弘(医学系研究科)

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 医学系研究科・医学部(保健学専攻) (Graduate School of Medicine, Faculty of Medicine (Division of Health Sciences))

取組要旨

我々は大阪大学の多くの講座や関連施設の先生方のご協力を頂き、WT1遺伝子が白血病などの血液悪性疾患や様々な固形悪性腫瘍において過剰発現し、癌遺伝子として腫瘍の発生や悪性化において重要な役割を果たすとともに、「癌の目印」として免疫システムが癌細胞を異物として認識する標的になることを世界に先駆けて明らかにしてきた。これらに基づき、「癌の目印」となるWT1ペプチドを投与することにより、抗腫瘍免疫応答を強力に誘導するWT1ペプチドワクチン癌免疫療法が安全で高い抗腫瘍効果を有する新たな癌の治療戦略になりうることをさまざまな癌腫を対象とした臨床研究により示してきた。特に、平均余命が約5.8か月と治療予後が極めて悪く、治癒することはないと考えられてきた再発悪性神経膠腫において、WT1ペプチドワクチン単剤で10年以上の長期生存を示し治癒したと考えられる症例も見られることは特筆に値する。我々のデータに刺激され、アメリカやヨーロッパの各国においてもWT1を標的とした癌免疫治療の開発が進められている。

研究成果・インパクト

これまでの先人の努力により新たな癌治療が開発されてきたが、依然その治療成績は多くの癌において不十分であり、患者およびその家族に大きな苦しみをもたらしている。さらに癌患者の多くは高齢者であり、癌治療に用いられる薬剤の副作用に耐えられず治療を断念することもしばしば見られる。WT1を標的とした癌免疫治療はこれまでの癌治療薬とはことなる作用で効き目を現す治療法であり、副作用もほとんどないため高齢者でも安全に治療を受けることができる。したがって、本研究成果は「すべての人に健康と福祉を」の考えに合致した社会に対するインパクトを持つ。

担当研究者

尾路 祐介、杉山 治夫、岡 芳弘(医学系研究科)

キーワード

WT1、がん、免疫療法

応用分野

医療