研究

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ヒトiPS細胞を用いた角膜再生医療の研究

西田 幸二(医学系研究科)

  • 医歯薬生命系
  • 医学部附属病院

取組要旨

 ヒトiPS細胞から発生期の眼の原基(角膜上皮、網膜、水晶体上皮等)を含む2次元オルガノイド培養の技術開発(SEAM法)に世界初で成功した(Nature, 2016)。SEAM法から角膜上皮前駆細胞を単離し、ヒトに応用可能なヒトiPS細胞由来角膜上皮細胞シートの作製に成功した(Nat Protoc, 2017)。SEAM法で基盤特許を取得し(特許)、諸外国にPCT出願を展開中。またSEAMの応用研究として、眼の発生の分子メカニズムの一端を足場依存性の観点から解明することに成功した。これによりラミニン(細胞外マトリックス)という足場の選別により、眼の原基発生の選択的制御に成功し(Cell Reports, 2018)、更に角膜上皮細胞の純粋な選別回収にも成功した(Stem Cell Reports, 2020)。本研究成果を元に、iPS細胞由来角膜上皮細胞シートを用いたfirst-in-humanの臨床研究を開始し、2019年7月に世界初のiPS細胞由来角膜上皮細胞シート移植を角膜上皮幹細胞疲弊症患者に実施した。現在進行中の臨床研究では全4例の移植を予定している。

再生医療図

研究成果・インパクト

first-in-humanの臨床研究にて安全性を検証した後に、速やかに企業治験に移行し、最終的に標準治療への発展を目指している。本治療法が確立されればドナー不足や拒絶反応といった既存治療の課題を克服することができ、これまで安全かつ有効な治療法がなかった角膜上皮幹細胞疲弊症患者の「健康と福祉」に貢献することができると考える。また、iPS細胞由来角膜上皮の安全性、有効性を検証することは、iPS細胞の臨床応用を目指している他の領域の開発にも有用な知見を提供することでき、再生医療に関わる「産業と技術革新の基盤」の創生に大きく寄与すると考える。

担当研究者

西田 幸二 (医学系研究科)

※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
西田 幸二
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2020/specialite_001_2/

キーワード

ヒトiPS細胞、角膜再生医療

応用分野

医学