研究 (Research)
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AIホスピタルによる高度診断・治療システム
土岐 祐一郎(医学部附属病院)
取組要旨
本院は、「Futurability」のコンセプトのもと、高度で安心な医療という患者の期待と、医療従事者の負担を減らすという両立のためにAI技術を病院で実際に使い、患者にも医療従事者にも恩恵のある、そのような病院としていくことを目指している。本院におけるAI技術を医療分野に応用する15を超えるAIシーズ研究があり、具体的にはX線写真や内視鏡、眼の画像を解析し診断を支援するAI、認知症や高齢者の体力の衰えをより簡単な検査で評価できるAIなどである。また、すぐに理解するのが難しいような手術の説明の際には、より分かりやすい説明を実現するAI、納得度や理解度を評価して説明を促す、将来的には医師に代わって「デジタルの主治医」が説明を補足するなどのプロジェクトにも挑戦している。
本院ではAI医療センターを設置し、その中には医師だけでなくAI専門家、倫理や法律の専門家もチームに加わっている。世界的にもAI分野では基礎研究から応用研究まで企業の存在感が大きいのが特徴で、病院は最新のAI技術を持つ企業と共同で研究開発を進めることも視野に入れていく必要がある。
医療の現場でAIを使うという新しい領域において患者も医療従事者も、開発担当者も、それぞれの観点から納得して安心できる形で医療の現場に生かす努力を行っている。
研究成果・インパクト
AIの開発には質の高い大量の医療データが必要とされることから、本院の医療情報部のデータサーバーに1993年以来蓄積している26億件のデータを活用し、将来の研究開発に備えて「阪大病院データバンク」を立ち上げて、患者の同意のもとで質の高い、大量の医療データを利活用したAI研究開発を行っていく。
近い将来、「AI」と言わずとも自然な形でAI技術が医療に取り込まれていくと考えているが、どんな素晴らしい技術であっても技術だけで問題が解決するわけではなく、それを使う「ひと」が重要となってくる。AIによって医療の現場で働くスタッフが持つ能力を最大限に発揮でき、AIで医療人を強くすることができると考えている。その結果として患者により良い医療が届けられることとなり、単にAI技術が搭載された機械や診断システムを使用しているということではなく、医療従事者がAIを使うことでより良い医療を患者に届ける、そしてAIを使って新しい医療を生み出していく、そのような環境を作って医療人を育て、新しい時代の医療に貢献していきたいと考えている。
担当研究者
土岐 祐一郎 (医学部附属病院)
キーワード
超高齢社会の医療の質の確保、医療従事者の負担軽減、医療費増加の抑制
応用分野
医学