研究

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国際投資法の研究

二杉 健斗(国際公共政策研究科)

  • 人文学社会科学系
  • 国際公共政策研究科

取組要旨

国際投資法とは、国際公法の一分野である国際経済法の一部をなすとともに、国際私法および国際民事手続法ならびに国内公法とも接点を持つ法分野である。その目的は、国境を越えた資本の移動(外国投資)、とりわけ企業経営を目的として行われる直接投資(外国直接投資(FDI))の保護と促進にある。伝統的に、国際投資法は、投資受入国の国際違法行為によって損害を被った外国投資家の国籍国がその請求を取り上げて、政府間の問題として賠償を請求することが通常であった(外交的保護)。しかし冷戦終結後は、諸国はFDI促進のため多くの条約(投資条約)を締結し、投資家が受入国を直接相手取って国際仲裁を申し立てる仕組みが構築されている(投資条約仲裁)。しかし、伝統的に国家を権利義務の担い手として発展してきた国際公法は、私人が国家に対して国際法上の請求を提起する場面を一般的には想定してこず、この新たな紛争解決制度の法的性質や運用のあり方をめぐっては、理論的にも実践的にも多くの問題が生じている。本研究では、特に投資家の法的地位の問題を主軸に、現代国際投資法の理論と実務を研究している。

研究成果・インパクト

投資の促進はSDGs達成のために必須であり、いくつかのターゲットは明示的に特定分野への投資拡大を志向している(1.b、2.a、7.a、10.bおよび17.5)。国際投資法はFDIの促進に貢献し得る国際法分野であるが、その一方、外国投資家に過剰な保護を与えることで、投資受入国の規制権限を損なったり、人権や環境を無視した事業を助長しているといった批判も、特に2000年代以降強まってきた。例えばEUでは、気候変動対策のため再生可能エネルギー分野へのFDIを誘致するための補助金制度を諸国が廃止したことで、多数の仲裁が申し立てられ、莫大な賠償金が請求されている。本研究は、現在の国際投資法がFDIの健全な促進に寄与するための条件を考える上での基礎を築くことで、SDGsの達成に貢献し得る。

担当研究者

二杉 健斗(国際公共政策研究科)

キーワード

外国直接投資、投資条約、国際開発法

応用分野

国際公法、国際私法、憲法、行政法、国際開発学