研究 (Research)
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光生検による未病診断法の確立
石井 優(生命機能研究科)
取組要旨
生体イメージングを駆使した‟光生検”による非侵襲(生検フリー)超早期がん診断法による「がんにならない」近未来医療の実現、さらには、全身性慢性炎症の“窓”としての皮膚を利用して、ウェアラブル経皮的未病モニター装着による「病気にならない」未来医療の実現のための研究開発を行う。具体的には進展の顕著な光学・情報基盤技術の基盤の上に、これまで担当者が先導して開発してきた生体イメージング技術を駆使することで、光を用いた画期的な非侵襲組織診断法(光生検法)を開発するとともに、種々の疾患における慢性炎症を生きた組織で可視化し、中でも病気を超早期、まだ未病の段階で検出し、その時点で治療介入・制御することを可能にすることで、病気にならないで健康を維持する未来医療の実現を追求する。まずは、患部を生検しないで、光を当てるだけで内部の組織構造を描出する“光生検”により、より安全・安心・低侵襲・高精度の超早期がん診断を実現することを目標とする。そして、さらにそれ以降には、光生検デバイスの高度化とともに軽量化・汎用化をはかり、ウェアラブル経皮的未病モニターを開発するとともに、“未病慢性炎症”をモニターして病気を発症前に検知する健康情報システムを構築する。
研究成果・インパクト
本研究により開発される「生検フリー・高解像度がん診断装置」は、生検をしない“光生検”技術により、がん細胞の悪性度や微小な浸潤・転移を正確に把握することで適切な治療法の選択が可能となる他、健診のスクリーニング検査の手段として用いることでより高精細に早期がんを発見することにつながり、がんの根治の可能性を上げることが強く期待される。診断技術の進歩は、常に適切な治療法の選択につながり、これは現在約100万人の患者が存在し、本邦における死亡率第一位を占め続けるがんの治療戦略を考える上で、医療的にも経済的にも極めて意義の大きいことである。早期発見によるがん根治や高精細診断結果に基づいた適切な治療選択のいずれも、医療費(社会保障費)の抑制につながるもので、本邦における医療経済の観点からも重要である。また、さらに開発を目指すウェアラブル経皮的未病モニターは、がん以外の様々な全身疾患の予兆を経皮的に観察可能な慢性炎症を検知することで“未病状態”をいち早く察知し、より詳細な検査や結果によっては超早期治療介入を可能にする観点から、その社会的インパクトは甚大である。病気にならない(なりにくい)健康管理基盤の構築は、究極の健康長寿社会を実現させ、医療費(社会保障費)の大幅な抑制・生産年齢の延長によって持続可能な人類社会へとつながるものである。
担当研究者
石井 優(生命機能研究科)
※本学ResOUのホームページ「究みのStoryZ」に、インタビュー記事が掲載されています。是非ご覧ください。
石井 優
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/story/2018/jwhvw/
キーワード
超早期診断,未病,光生検,生体イメージング
応用分野
医学,薬学,光学,医療機器