研究 (Research)
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異常な発熱を生じる疾患の分子メカニズムの解明
原田 慶恵・鈴木 団(蛋白質研究所)
取組要旨
様々な細胞の機能や病態化メカニズム解明への期待から、生物の積極的な熱産生に着目しています。そこで、熱産生を細胞内部の微小領域で計測できる手法の開発を進めています。また細胞の微小な熱産生を模倣し、熱に対する細胞の応答、あるいは細胞内の化学的・物理的過程の反応を検出する試みも進めています。本取り組みにおいては、骨格筋で生じる症状を対象とした研究に取り組んでいます。これは、多くの場合、手術で用いる呼気麻酔がきっかけとなり、骨格筋における熱産生が暴走し、体温の上昇が止まらなくなる致死性の症状です。原因は膜タンパク質であるリアノジン受容体における点突然変異であることが知られています。しかしなぜこの変異体によって熱産生が暴走するのか、その仕組みは不明です。この問題に対して、光学顕微鏡下で細胞を観察しながら、その近傍へ局所的な熱刺激を与える技術を用いて、細胞の応答を計測することで明らかにしようと取り組んでいます。
研究成果・インパクト
この研究活動より得られる成果から、悪性高熱症において体温の上昇が暴走する仕組みが明らかになると期待されます。すなわち体温上昇の暴走を抑制、あるいは事前に生じなくする手法についても明らかにできると期待されます。現在は、術中・術後に症状が見られた場合には、例えば体温を冷やすことで上昇を防ぐ、といった受動的な対処法しか存在しません。しかし本研究成果を経て仕組みが明らかになることで、事前の予防策やより効果的な対処法の確立につながることで、多くの人の健康と福祉への貢献が期待されます。また新しい手法から、これを臨床の場でより効果的に実行するための新たな産業と技術革新の基盤が生まれてくることも期待できます。
担当研究者
原田慶恵、鈴木団(蛋白質研究所)
キーワード
熱産生、熱刺激、熱応答、リアノジン受容体、骨格筋
応用分野
基礎医学、臨床研究、製薬