研究

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生体エネルギー変換の仕組みを探るー生物のエネルギー生産の理解と応用

栗栖 源嗣(蛋白質研究所)

  • 理工情報系
  • 蛋白質研究所

取組要旨

生体の中で蛋白質は,ネットワークを形成しながら機能しています.我々は,蛋白質結晶学とクライオ電子顕微鏡構造解析の手法を用いて,複合体状態の蛋白質を構造解析し生命システムを理解しようとする研究をおこなっています。蛋白質の構造を解析することで,すべての生命現象を理解できるとは思いませんが,「呼吸」「光合成」「生体運動」などの生体エネルギー変換に限って考えた場合,その働きは複合体蛋白質の結晶構造を基に理解することができます。我々の研究室では,「光合成」「蛋白質工学」をキーワードに,次の構造生物学研究を進めています.まず,光合成のエネルギー変換機構の研究です.光化学系I複合体と呼ばれる巨大な膜タンパク質複合体からどのように,光依存的に電子が分配されて行くのかを,複合体状態の結晶構造を基に理解したいと考えています。次に,藻類がもつ水素生成酵素(ヒドロゲナーゼ)を合目的に改変し,安定性と活性の向上を図ます。最終的には,光エネルギーにより藻類が水から水素ガスを生成可能な人工モデル細胞の設計を目指しています。(別図JPEGデータあり)

研究成果・インパクト

本提案で取り上げる光合成エネルギーによる水素ガス生産が可能となれば,ガスの燃焼により排出されるのは水のみであり,非常にクリーンなエネルギー源を供給することにつながる。共同研究者であるドイツ・ルール大学のRögner教授によると,好熱性ラン藻に水素ガスを安定に生産させることができれば,サハラ砂漠の1/10の面積の培養槽で十分に全世界のエネルギー生産が賄えると試算されている。ラン藻をはじめとする光合成生物は,現在問題となっている二酸化炭素を固定して生育する。そのため,低炭素社会実現にも寄与すると考えられる。

担当研究者

栗栖 源嗣(蛋白質研究所)

備考

蛋白質結晶解析とクライオ電子顕微鏡による構造解析の技術は世界トップレベルであると自負しています

キーワード

構造解析,蛋白質工学,光合成,水素ガス

応用分野

バイオテクノロジー,代替燃料開発