研究 (Research)

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環境と経済成長の相互関係の分析

堀井 亮(社会経済研究所)

  • 人文学社会科学系 (Humanities and Social Sciences)
  • 社会経済研究所 (Institute of Social and Economic Research)

取組要旨

 本研究では、環境の質と経済成長の間の双方向の因果関係を分析している。経済成長が進むと汚染排出の増加によって環境の質を低下させる場合があるが、一方環境の質が低下すると、健康被害や災害により経済の生産性が損なわれるために経済成長の持続を困難にする。
 このような双方向の因果関係を本研究では「成長の限界」と呼び、低開発国においては成長の限界は「貧困と環境悪化の罠」という形で現れることを示した。諸国間の所得および環境の質の長期にわたる格差は、このような罠の存在によって説明されうる。
 また、環境と成長の双方向の因果関係は、世界経済全体の成長持続性をも脅かす。特に、経済成長による温室効果ガス排出が自然災害のリスクを上昇させる場合、その脅威は深刻となる。このような因果関係を断ち切るためには、環境政策の強化が必要となる。たしかに短期的には経済成長と環境改善の間にはトレードオフがあるが、本研究では、環境税や所得再分配により、長期的に環境・経済成長が可能とするような政策を提案している。

研究成果・インパクト

研究成果を社会に適用し、目標13の「気候変動に具体的な対策を」を実現するため、2016年より環境省の「税制全体のグリーン化推進検討会」委員 として政策立案に参加している。同検討会委員として、国内・諸外国の環境政策を分析しており、おもに環境税・炭素税の導入に向けて具体的作業を進めている。同時に、自動車の環境税制についても、燃費基準の経時的な見直しや、エコカー・電気自動車の導入促進制度等の分析・検討を行っており、本研究に基づく意見・助言が実際の政策に反映されつつある。
 これらの政策においては、単に気候変動を抑制するだけでなく、同時に経済成長の持続(目標08)、技術革新の促進(目標09)も実現する必要がある。環境のみの専門家の意見だけではなく、本研究のように、経済と環境の相互関係を論理的に分析した知見を提供することは、SDGsの全体的な達成に貢献していると考えられる。

担当研究者

堀井 亮(社会経済研究所)

キーワード

環境・経済成長・地球温暖化・環境税・貧困

応用分野

環境税制、環境政策、経済政策