研究 (Research)
最終更新日:
カイコ物質生産システムによる持続可能社会への貢献
藤山和仁・梶浦裕之(生物工学国際交流センター)
取組要旨
カイコは他の宿主細胞に比べ極めて高いタンパク質発現能力を有し、その物質生産能力はカイコ1頭でmgオーダーの外来タンパク質を発現することが可能です。また発現効率の高さ、生産(飼育)規模変更の自由度が高い点、さらにはウイルスを利用した一過的な発現システムの利用により数日以内に目的タンパク質を得ることも可能です。このため、カイコ生産システムは現在猛威を振るう新型コロナウイルス感染症対策や季節性のインフルエンザウイルス感染症対策に柔軟かつ迅速に対応できる、“発酵槽を必要としない“次世代のバイオリアクターとして注目されています。このカイコ生産システムの様々な魅力の上に、さらに私達は現在その重要性が広く認識されているタンパク質の翻訳後修飾の1つ、糖鎖修飾の最適化を行い、より生体内で機能を発揮するタンパク質の生産システムを構築することに取り組んでいます。また、産学官連携の”蚕業革命“を目指した共同研究を通して、多種多様なタンパク質生産と、より高品質かつ効果を発揮する付加価値が備わったタンパク質生産に向けた新たな試みと、商業化に向けた取り組みを実施しています。
研究成果・インパクト
カイコ生産システムではCO2排出量、及び使用する水資源の総量は従来の発酵槽での物質生産に比べ圧倒的に少なく済みます。従来細胞培養に必要な無菌施設や特別な装置をカイコの飼育では必要とせず、人工飼料と飼育可能な環境が揃えば遺伝子組換え生物の自然環境への拡散を完全に防ぎつつ、タンパク質高生産を実現できます。カイコ生産システムは様々な診断薬、疾病に対する予防、治療薬といった健康・医療分野に欠かすことのできないワクチン、タンパク質を環境にやさしく大量に創り出せるため、環境共存型の理想的な物質生産システムとなり得ます。
担当研究者
藤山和仁、梶浦裕之(生物工学国際交流センター)
キーワード
タンパク質生産
応用分野
医療、資源保全、エネルギー確保