研究

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二酸化炭素によるメタンの分解を促進するナノ触媒の開発

伊藤 正・竹田 精治(エマージングサイエンスデザインR³センター)、森川 良忠(工学研究科)、Abdul Rahman Bin Mohamed(マレーシア科学大学化学工学部)

  • 全学・学際など
  • エマージングサイエンスデザインR³センター

取組要旨

マレーシアではパームオイル(ヤシ油)がエネルギー源として大量に生産されているが、その量の数倍の洗浄用廃液が放出され、分解用のため池に長期間貯蔵されることで二酸化炭素、メタンガス、硫化水素が大量に大気中に放出されており、大気汚染、地球温暖化への影響が大いに懸念されている。また漏れ出した廃液は水質汚染をもたらしている。これらSDGsに逆行する要因を取り除き、再生可能エネルギー生産に向けて、通常は困難な「メタンと二酸化炭素を一酸化炭素と水素ガスに効率よく変換する」ナノ構造を持った新規触媒を新たに開発するための共同研究を行っている。ナノテクノロジーを駆使した新規触媒はマレーシアで試作するが、大阪大学の参加の下にその機能を計算科学でオプティマイズし、電子顕微鏡でナノ構造を観測し、反応過程を明らかにする。また、マレーシア科学大学ではパイロットプラントを立ち上げ、開発した触媒の実用化を探る。

研究成果・インパクト

本研究は基礎研究ではあるが、Rahman教授は産学連携も精力的に行っており、効率の良いナノ触媒が開発された暁には、パームオイル生産に伴い放出される大量の廃液の浄化を通じて国土のクリーン化と新エネルギー産業の新興にも貢献する。いのちを守り、安全な水、クリーンエネルギー、脱カーボンに寄与するとともに、自然と共生する地方の人々を「誰一人も取り残さない」ための新産業の振興を促すことにも繋がると期待される。

担当研究者

伊藤 正、竹田 精治(エマージングサイエンスデザインR³センター)、森川 良忠(工学研究科)、Abdul Rahman Bin Mohamed(マレーシア科学大学化学工学部)

備考

マレーシア科学大学との10年来の学術交流をベースに、共同研究を通じてSDGsに貢献する大学院生と若手研究者の人材育成を図るために、マレーシア科学大学に触媒化学合成の国際ジョイントラボ、阪大にナノ構造作製・構造解析の国際ジョイントラボがいずれも2020年春に立ち上げられ、実質的な活動の場として利用できる体制が整えられた。2019年度にはマレーシア科学大学にてシンポジウムを開催し、阪大側から10名が参加、マレーシア側は企業も含めて140名余りが参加・議論を行った。また2020,2021年度にもベトナム科学技術院物質科学研究所も参加した合同オンラインシンポジウムを開催し、3者合わせて110名、113名が参加・議論した。2022、2023年度にはマレーシアから教職員・大学院生を合わせて7名を受入れ、国際ジョイントラボでのナノ触媒の電子顕微鏡観察や電子顕微鏡高度リトレーニングに参加した。
共著論文は• Lee, K.-Y., Yeoh, W.-M., Chai, S.-P., Ichikawa, S., Mohamed, A.R. (2013). Catalytic decomposition of methane to carbon nanotubes and hydrogen: The effect of metal loading on the activity of CoO-MoO/Al2O3 catalyst. Fullerenes Nanotubes and Carbon Nanostructures 21, 158-170. 他8編。

キーワード

水質汚染、地球温暖化、再生可能エネルギー、新産業

応用分野

触媒化学、ナノテクノロジー、電子顕微鏡構造観察、計算物質科学