研究 (Research)

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光でRNAの構造と機能を制御する分子 (Synthetic small molecules for photocontrol of RNA structure and function)

准教授 堂野 主税 (産業科学研究所 精密制御化学研究分野) DOHNO Chikara (SANKEN (The Institute of Scientific and Industrial Research))

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 産業科学研究所 (SANKEN (The Institute of Scientific and Industrial Research))

English Information

研究の概要

一本鎖状態で産生される RNA は、折りたたまれて様々な高次構造を形成する。RNA の取りうる高次構造は、RNA が生体内で発揮する機能と深く関連しており、RNAの高次構造形成を制御することができれば、その機能をも制御することが可能である。我々は、標的 RNA に結合することで、RNA の構造と機能の制御を実現する合成分子(RNA 結合リガンド)の創成に取り組んできた。
本研究では、光を照射することで活性の ON/OFF 制御が可能である、光応答性の RNA 結合リガンドを新規に創成し、RNA 切断触媒活性を有する RNA(リボザイム)の細胞内での活性を光照射によって自在に制御することに成功した。

研究の背景と結果

細胞内では多種類の RNA が発現しており、多様な作用機序を介して生体機能の調節を担っている。近年の RNA 研究の進展によって、生体機能制御や創薬研究において主要な標的であったタンパク質やゲノムDNA に加えて、RNA が重要な位置を占めるようになった。RNA の特定の配列や構造に結合するリガンドは、生体機能制御を実現する分子ツールとして期待されている。
我々は、時空間的な精密制御可能な外部トリガーである光に着目し、標的 RNA の高次構造と機能を自在に制御する光応答性 RNA 結合リガンドの開発を行った。
これまでに開発に成功している RNA 結合リガンドを基盤として、光応答性分子であるアゾベンゼンを適切に分子構造に組み込むことにより、光応答性RNA結合リガンド(NCTA)の設計合成を行った。NCTAは、光刺激に応答して異性化が進行する。365 nm の近紫外光を照射すると活性型である Z 型、460 nm の青色可視光を照射すると不活性型である E 型へと可逆的に構造変換が可能である。Z 型の NCTA は、標的RNAに結合するが、E型は結合することができない。標的RNAとして、我々の開発したリガンド異存性リボザイム(RNA 鎖切断触媒能を有する RNA 酵素)を用いると、NCTA 存在下において光照射に応じてリボザイムの RNA 切断触媒活性を制御することに成功した。E 型の NCTAは、リボザイム活性に影響を与えないが、光照射により Z 型の NCTAを生成させると、リボザイムに結合して触媒活性を有する高次構造形成を誘導することを明らかにした。
本システムは、ヒト培養細胞系にも適用が可能であり、NCTA と光を用いて標的タンパク質の発現調節にも成功した。任意のタイミングでの光照射により活性化あるいは不活性化された NCTA が、モデル細胞内のリボザイム活性を制御することにより、上記の遺伝子発制御を実現している。

研究の意義と将来展望

ヒトゲノムの7割以上の領域は RNA へと転写されるが、そのうちタンパク質をコードしている RNA は5% にも満たない。タンパク質に翻訳されない RNA も生体内で多様な機能を担っており、また新規機能の発見も相次いで報告されている。RNA 標的小分子リガンドを基盤とする戦略は、高次構造と機能を相関付けることのできる様々な機能性RNA へと展開可能である。
光応答性を付与したリガンドは、標的 RNAの機能の時空間的な精密制御を可能とし、RNA 機能解明に向けた分子プローブとして、また、薬理活性を光制御可能な薬剤として期待される。

図1. 2種類の光によって可逆的に異性化するRNA結合リガンド(NCTA)
図2. NCTAと光刺激によるリボザイムの活性、不活性化に基づく遺伝子発現調節

担当研究者

准教授 堂野 主税 (産業科学研究所 精密制御化学研究分野)

キーワード

RNA/リボザイム/核酸標的小分子/合成生物学

応用分野

創薬、医療・ヘルスケア

参考URL

https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/rbc/
https://researchmap.jp/DC000016

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2025(未来社会共創を目指す)より抜粋・修正したものです。