研究 (Research)

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NDB (レセプト情報・特定健診等情報データベース)に基づくリアルワールドエビデンスの創出と評価 (Creation and evaluation of real-world evidence based on the NDB)

招へい教授 藤井 誠、特任研究員(常勤) 池田 明日香、教授 樺山 舞 (医学系研究科 保健学専攻) FUJII Makoto, IKEDA Asuka, KABAYAMA Mai (Graduate School of MedicineSetting)

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 医学系研究科・医学部(保健学専攻) (Graduate School of Medicine, Faculty of Medicine (Division of Health Sciences))

English Information

研究の概要

糖尿病による透析患者の増加は深刻な経済問題であり、日本を含む先進国において喫緊の政策課題である。本研究では、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)を用い、糖尿病性腎症予防に向けた保健指導目標を明らかにし、厚生労働省が推進する糖尿病性腎症重症化予防プログラムの効果検証を行った。1000万人以上の特定健診情報より、糖尿病患者の20.83%に10%/年以上の急速な腎機能低下があること、収縮期血圧高値、糖尿病管理不良または厳格管理、尿中蛋白排泄量の増加、血中ヘモグロビン濃度の低下がリスク要因であることを明らかにした。
また、生活習慣では、朝食の欠食、習慣的な喫煙、習慣的な運動不足、就寝前の夕食摂取、睡眠不足がリスク要因として特定された。さらに、国民健康保険保険者の糖尿病性腎症重症化予防プログラムの取り組みの医療機関受診に対する付加効果は、全要件充足の保険者の方が、取り組みなしの保険者よりも有意に高いことを明らかにした。

研究の背景と結果

糖尿病による透析患者の増加は深刻な経済問題であり、日本を含む先進国において喫緊の政策課題である。本研究では、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)を用い、糖尿病性腎症予防に向けた保健指導目標を明らかにし、厚生労働省が推進する糖尿病性腎症重症化予防プログラムの効果検証を行った。解析対象は、2018年度に特定健康診査を受診した29,393,195人である。
推定糸球体濾過量(eGFR)の検査を受けた3,673,829人における、一般化線型混合モデルを用いた1年間の腎機能の縦断的評価では、糖尿病患者の20.83%が観察期間内に10% 以上の腎機能が急速に低下していたこと、腎機能の急速な低下に関連する要因は、収縮期血圧高値(OR: 120–130mmHg, 1.10 [1.07–1.13]; 160mmHg 以上 , 1.54 [1.48–1.61]; reference: 120mmHg 未満)、糖尿病管理不良または厳格管理であること(OR: HbA1c 8.4% 以上 , 1.80 [1.74–1.87]; 6.2–6.9%, 0.96 [0.93–0.98], reference: 6.2% 未満)、尿中蛋白排泄量の増加(OR: 3+, 3.37 [3.07–3.70]; reference: 陰性)、血中ヘモグロビン濃度の低下(OR: 9 g/dl 未満 , 1.54 [1.18–2.00]; reference, 13g/dl 以上)であった。
また、2年間の評価が可能であり、最終的な eGFR85 mL/ 分 /1.73 m2以下であった573,860人における生活習慣に関するロジスティック回帰分析では、30% 以上の腎機能の低下は1.34% で、40–59歳ではeGFR30–59未満において睡眠不足(OR: 1.19 [1.00–1.42])、習慣的喫煙(OR: 1.45 [1.21–1.73])、60–74歳では、習慣的喫煙(OR: 1.84 [1.55–2.17])、朝食の欠食(OR: 1.35 [1.06–1.70])、習慣的な 運 動 不 足(OR: 1.48 [1.26–1.74])、就 寝 前 の 夕 食(OR: 1.22 [1.03–1.45])がリスクとして同定された。
さらに、2015年度と2018年度の糖尿病者208,388人を対象とした国民健康保険の保険者の取り組みと医療機関受診行動の一般化線型混合モデルを用いた解析では、医療機関受診に対する糖尿病性腎症重症化予防プログラムの取り組み別の効果は、全要件充足の保険者が取り組みなしの保険者に比べ有意に高かった(対数 OR: 0.159 [0.063-0.256])。
今回の知見は、慢性腎臓病予防のための効果的な保健指導やガイドラインを確立する上で、研究者、臨床医、その他の公衆衛生関係者にとって重要な研究である。

研究の意義と将来展望

ビッグデータを扱う情報科学、疫学・統計学、臨床に有用な価値を還元する医学・保健学など学際的な知識が必要である。
ビッグデータ解析が世界的なトレンドとなる中で、国民皆保険制度が半世紀以上維持されている NDB からリアルワールドエビデンスを創出していく取り組みは、あらゆる分野において重要な研究基盤である。

担当研究者

招へい教授 藤井 誠、特任研究員(常勤) 池田 明日香、教授 樺山 舞 (医学系研究科 保健学専攻)

キーワード

NDB (レセプト情報・特定健診等情報データベース)/糖尿病性腎症/リアルワールドエビデンス

応用分野

医療・ヘルスケア、ビッグデータ・リアルワールドデータ

参考URL

https://researchmap.jp/m-fujii
https://researchmap.jp/asukaikeda
https://researchmap.jp/kabayama

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2025(未来社会共創を目指す)より抜粋・修正したものです。