研究 (Research)

最終更新日:

食道癌の予後と免疫治療効果予測における腫瘍辺縁三次リンパ様構造の意義 (The significance of peritumoral tertiary lymphoid structures in predicting prognosis and immunotherapy efficacy in esophageal cancer)

講師 牧野 知紀、教授 土岐 祐一郎 (医学系研究科 消化器外科学) MAKINO Tomoki, DOKI Yuichiro (Graduate School of Medicine)

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻) (Graduate School of Medicine, Faculty of Medicine (Division of Medicine))

English Information

研究の概要

本研究は、食道癌の周囲に形成される三次リンパ様構造(TLS)と呼ばれるリンパ組織が、患者の予後や抗 PD-1抗体治療に対する反応性を予測する可能性があることを示しました。TLS は後天的に発生する免疫細胞の集合体であり、宿主免疫応答に影響を及ぼす可能性が示唆されていますが、食道癌における明確な機序や意義は未だよくわかっていません。
本研究では手術切除標本を用いて食道癌辺縁に形成される TLS の密度と成熟度を評価し、TLS の存在が腫瘍ステージや術後予後と関連することを明らかにしました。とくに成熟した TLS でこの傾向が強く、これには成熟 TLS を構成する CD138陽性形質細胞が関与している可能性が示唆されました。さらに、術後再発をきたした際に免疫チェックポイント阻害剤(以下、ICI)治療が効果的かどうかの予測に役立つことを明らかにしました。

研究の背景と結果

食道がんは未だ治療の選択肢が限られている難治性がんの一つであり、主軸治療である手術の後にも高い割合で再発を来す予後不良の疾患です。近年免疫チェックポイント阻害剤の導入により新たな治療法の可能性が模索されていますが、依然として治療の奏効性は患者により異なり、同治療の恩恵を受けることができる患者は限られています。そのため治療効果の予測が治療戦略を立てる上で重要な課題となっているとともに、食道がんの腫瘍免疫微小環境が治療にもたらす影響の解明がますます重要視されています。
本研究では、大阪大学医学部附属病院および大阪国際がんセンターの2施設において術前無治療で根治切除を受けた食道がん患者316症例の切除標本を用いて、TLS の密度と成熟度をそれぞれ評価しました。TLS は正常部~前がん病変にあたる異形成部位では密度が極めて低いのに対して、癌部(とくに早期がん)の辺縁に著しい発現がみられ、腫瘍Stageが進行するとともにその発現が低下することがわかりました。TLS 高発現群は腫瘍 Stage が浅く、手術時の血液検査による栄養免疫学的指標が良好である傾向が見られました。
また TLS 高発現群は低発現群と比べて予後良好であり、とくに成熟した TLS において強い傾向があることがわかりました。腫瘍辺縁に存在する TLS の構成細胞分析を行ったところ、成熟 TLSでは免疫細胞数が多く多様性に富み、とくに CD138陽性形質細胞が著明に集積していることが明らかになりました。
さらに本研究では、術後再発に対して ICI(抗 PD-1抗体; Nivolumab)による治療を施行した症例34例において、初回手術時標本の腫瘍辺縁 TLS を評価しました。TLS 高発現は良好な ICI の治療効果と相関することを明らかにし、治療前の組織検査によって、のちの ICI 治療の効果を予測できることが示唆されました。

研究の意義と将来展望

TLSの形成と成熟は、食道がん治療における有望なバイオマーカーとして注目され、今後の免疫療法において個別化医療の最適化に役立つ可能性があります。さらに、今後ICI投与前にTLSを誘導するなど、TLSを標的にした新たな治療法の開発にも応用できる可能性が期待されます。

図1: TLSの形態とTLS成熟度に基づく食道癌患者生存期間分析
図2: TLS構成細胞の変化と抗PD-1抗体治療反応に基づくTLS発現

担当研究者

講師 牧野 知紀、教授 土岐 祐一郎 (医学系研究科 消化器外科学)

キーワード

食道癌/三次リンパ様構造/腫瘍免疫/免疫チェックポイント阻害剤

応用分野

医療、ライフサイエンス

参考URL

https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20230515_1
https://www.sysmex-medical-meets-technology.com/_ct/17632887
https://www.m3.com/clinical/news/1141232
https://researchmap.jp/yohayashi
https://researchmap.jp/_-_-_-
https://researchmap.jp/ydoki3251

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2025(未来社会共創を目指す)より抜粋・修正したものです。