研究 (Research)
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ヒトの感染反応の単一細胞解析 (Single cell analysis of human infection responses)
教授 James Badger Wing (感染症総合教育研究拠点 感染症・生体防御研究部門/ヒト生体防御学チーム) James Badger Wing (Center for Infectious Disease Education and Research (CiDER))
研究の概要
COVID-19感染に対する免疫応答には性差があることが観察されているが、その細胞基盤はわかっていませんでした。本研究グループは、免疫細胞を一細胞レベルで高次元に解析できるマスサイトメトリーを用いて COVID-19患者における免疫細胞応答を検討しました。それにより、COVID-19急性感染期には抗体産生を調整する濾胞性制御性 T細胞(Tfr)の誘導が性別により異なり、男性では女性に比べて Tfr の誘導が顕著に抑制されていることを世界で初めて明らかにしました。さらに、末梢性ヘルパーT 細胞、形質芽細胞、および異型 B 細胞を含む細胞ネットワークが、中和抗体濃度と強い相関を示すことを発見しました。
これらの結果から、Tfr を中心とする抗体産生関連細胞のネットワーク調整が、COVID-19患者の免疫応答の性差の主要因である可能性が示唆され、COVID-19感染症への応答の性差を説明するメカニズムの解明に繋がることが期待されます。
研究の背景と結果
COVID-19感染に対する抗体産生は、COVID-19感染症を防御するために重要な免疫応答の一つです。これまで、COVID-19感染症による重症化の程度には性差があることが報告されており、男性の方が女性に比べて重症化しやすいといわれてきました。しかし、COVID-19に対する抗体の産生を調整するネットワークは、稀な細胞タイプの複雑な相互作用に基づくため、一般的な技術では解明が困難でした。本研究グループでは、免疫細胞を一細胞レベルで高次元に解析できる新しい単一細胞解析法である「マスサイトメトリー」を用いて、COVID-19感染症患者の免疫細胞の状態を詳細に解析することに成功しました。
その結果、COVID-19を発症している時には、抗体産生を適切に調整するのに重要な「濾胞性制御性 T 細胞(Tfr)」が、すべての患者で減少していることを確認することができました。特筆すべきは、この減少が男性患者でより顕著であり、同時に女性患者に比べて抗体産生 T 細胞および B 細胞の数が著しく増加していることも確認できました。さらに、この細胞バランスの乱れは、重症例でより顕著であることが判明し、男性患者の重症化率が高いことの原因である可能性が示唆されました。
研究の意義と将来展望
本研究成果により、COVID-19に対する抗体産生を制御する細胞間相互作用をよりよく理解することで、COVID-19による重症化を予測できることが期待できます。
また、COVID-19を制御する新しい治療法を開発できる可能性があります。さらに、男性患者には高いレベルの抗体産生が見られるにも関わらず、重症化することが多いという知見は、COVID-19感染においては男女で異なる治療法の開発が必要であることを示唆しています。この性差に基づく免疫応答の理解は、より個別化された効果的な治療法の開発につながる可能性があります。


Tfr:濾胞性制御性T細胞
Tph:末梢性ヘルパーT細胞
Atypical B cell:異型B細胞
Plasma blast:プラズマブラスト(形質芽細胞)
担当研究者
教授 James Badger Wing (感染症総合教育研究拠点 感染症・生体防御研究部門/ヒト生体防御学チーム)
キーワード
濾胞性制御性 T 細胞(Tfr)/Tph:末梢性ヘルパーT 細胞/異型 B 細胞/プラズマブラスト(形質芽細胞)
応用分野
医療・ヘルスケア、創薬
参考URL
https://www.cider.osaka-u.ac.jp/researchers/James.html
https://researchmap.jp/jbwing
