研究 (Research)
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グローバルヘルスからプラネタリーウェルビーイングへ:概念整理と未来への探究 (From global health to Planetary Well-Being: Conceptual arrangement and future exploration)
教授 金森 サヤ子 (全学教育推進機構) KANAMORI Sayako (Center for Education in Liberal Arts and Sciences (CELAS))
研究の概要
近年の気候変動や新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機に、単に病気や不調がないだけでなく、次世代や地球環境への影響も考慮した、身体的・精神的・社会的に全てが満たされた状態にあることを享受できる未来を創造することを目指すプラネタリーウェルビーイングという概念の重要性が喚起されている。
本研究では、この概念の定義や含めるべき論点、また、日本をはじめとする各国の比較優位等について、様々な分野の専門家及び産官学民様々なセクター関係者と共に概念を整理し、特に我が国が今後どのようなイニシアティブ形成をし得るのかについて検討するものである。
研究の背景と結果
気候変動、生態系破壊、紛争、広がる格差、感染症の蔓延…世界では、人類の生存基盤に関わる様々な課題が相互に複雑に絡み合い、同時多発的に起こっている。グローバルヘルスは、もともと国内の保健医療課題解決を目指す公衆衛生と主に低中所得国における保健医療課題の解決を目指す国際保健という2つの学問分野から派生した比較的新しい学際的学問分野である。
しかし、近年の気候変動や新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機に、主に人間の健康問題に焦点を当てたグローバルヘルスから、単に病気や不調がないだけでなく、次世代や地球環境への影響も考慮した、身体的・精神的・社会的に全てが満たされた状態にあることを享受できる未来を創造することを目指すプラネタリーウェルビーイングという概念の重要性が喚起されている。
プラネタリーウェルビーイングで扱うべき課題は、グローバルヘルスのそれと似ているが、ヒトの身体的のみならず、精神的・社会的健康にも焦点を当てている点、そして、その地球環境への影響や次世代へのインパクトにまで配慮している点がこれまでと異なる点であろう。また、パートナーシップのあり方も、従来の官セクター主導のもとの、先進国と開発途上国との間のやり取りではなく、SDGsウェディングケーキに象徴されるような、世界、地域、国、自治体間の垂直の連携と、産官学民マルチステークホルダーによる水平の連携に基づく、開発や解決施策の実施と連帯が必要になってくる。
更に、グローバルヘルスでは、集団予防と個人臨床ケアに主眼が置かれてきたが、プラネタリーウェルビーイングでは個人レベルでの予防(未病)、そして個人・集団の福祉を包含するものである。また、社会的・経済的公平性の促進と健康格差の是正は、プラネタリーウェルビーイングの追求においても重要なテーマの一つであろう。
我々人類はこれまでも数々の健康危機に見舞われてきた。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、先進国も開発途上国同様、或いはそれ以上に影響を受けたことによって人類史上稀に見るワクチン分配格差や精神・社会的悪影響が生じた。
こういった課題の解決には、医歯薬学、社会・生物系科学のみならず、人文学、数物・工学系科学、化学、情報学等様々な分野、そしてセクターの知見が不可欠であり、プラネタリーウェルビーイングの学際性が伺える。
研究の意義と将来展望
持続可能な開発目標(SDGs)の達成期限まであと5年となった今、ポスト SDGs に関する議論が始まりつつある。ロシアウクライナ戦争に象徴されるような不安定で不確実な世界、経済格差の拡大、AI 等の技術革新と発展、社会の高齢化など SDGs が採択された2015年から、私たちを取り巻く国際社会は大きく変わってきている。特に新型コロナウイルス感染症のパンデミックから我々人類が得た教訓の一つは、世界連帯の重要性であろう。
こういった中で、プラネタリーウェルビーイングという概念について様々な分野、セクター関係者と議論、概念を整理していくことは、我が国が今後、如何に世界益と国益との両立を追求していくのかという命題に対する解を得ていく上で極めて重要である。



担当研究者
教授 金森 サヤ子 (全学教育推進機構)
キーワード
公衆衛生/国際保健/プラネタリーウェルビーイング/学際融合教育研究
応用分野
医療・ヘルスケア、国際協力、保健外交
