研究 (Research)
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カニ殻ナノキチンを用いた弾性カーボンエアロゲルの調製とスマート電磁波吸収応用 (Fabrication of elastic carbon aerogels from crab-shell-derived nanochitin for smart microwave absorption)
准教授 古賀 大尚 (産業科学研究所 自然材料機能化研究分野) KOGA Hirotaka(SANKEN (The Institute of Scientific and Industrial Research))
研究の概要
電磁波汚染の懸念が高まる中、高性能な電磁波吸収材料の重要性が益々高まっています。
本研究ではまず、カニ殻由来ナノキチンの水分散液を原料に用い、一方向凍結乾燥と炭化プロセスによって、カーボンエアロゲルを調製しました。本カーボンエアロゲルは、一方向凍結乾燥で形成されたマイクロハニカムチャンネル構造、および、炭化で形成された適度な欠陥カーボン分子構造により、優れた電磁波吸収性能を発揮しました。
また我々は、本カーボンエアロゲルが、マイクロハニカムチャンネルに対して垂直方向に、可逆的に圧縮可能な弾性も有していることを見出しました。そして、この弾性カーボンエアロゲルの圧縮歪みを制御することで、電磁波の吸収周波数をチューニング、さらには、電磁波の吸収 / 透過をスイッチングすることに成功しました。このような吸収周波数のチューニングと電磁波の吸収 / 透過スイッチングは、少なくとも6万回の圧縮・回復サイクルにおいて繰り返し可能でした。
研究の背景と結果
無線通信に向けた電磁波利用のニーズが増大する一方で、電磁波汚染が懸念されています。また近年、電磁波の利用周波数帯域も拡大しています。そのため、不要な周波数帯を吸収して必要な周波数帯は透過する、すなわち、吸収 / 透過特性を可逆的に調整できるスマートな電磁波吸収材料の開発が求められています。
本研究ではまず、カニ殻から得られる市販のナノキチン水分散液を一方向凍結乾燥し、さらに800℃で炭化することで、マイクロスケールのハニカムチャンネル構造を持つカーボンエアロゲルを調製しました。そして、そのマイクロハニカム構造、および、N と O がドープされた適度な欠陥カーボン分子構造によって、優れたインピーダンス整合と誘電損失特性が得られ、非常に優れた電磁波吸収を示すことを見出しました。また本カーボンエアロゲルは、マイクロハニカムチャンネルに対して垂直方向に、可逆的に圧縮可能な弾性を示します(図1)。
そこで我々は、この弾性カーボンエアロゲルの圧縮歪みを制御することで、電磁波の吸収周波数チューニング、および、吸収 / 透過スイッチングを行いました(図2)。まず、弾性カーボンエアロゲルの圧縮歪みを0から20%、40%、60% と変化させることで、最大吸収を示す周波数を10.4 GHz からそれぞれ11.0 GHz、11.5 GHz、12.1 GHz にチューニングすることができました。この電磁波吸収周波数チューニングは、圧縮により、弾性カーボンエアロゲルが適度な誘電正接を保持しながら、厚みを減少させることで実現されています。さらに、弾性カーボンエアロゲルの圧縮歪みを60% から80% に変化させると、インピーダンス不整合、および、誘電正接の低下を引き起こし、電磁波を透過させることが分かりました。すなわち、電磁波の吸収 / 透過スイッチングを実現しました。弾性カーボンエアロゲルの圧縮 / 回復による電磁波の吸収周波数チューニング、および、吸収 / 透過スイッチングは、少なくとも6万サイクルの間、繰り返し可能でした。

(cc BY, credit: 2023 Li et al. Frequency-Tunable and Absorption/Transmission-Switchable Microwave Absorber Based on a Chitin-Nanofiber-Derived Elastic Carbon Aerogel. Chemical Engineering Journal)

(cc BY, credit: 2023 Li et al. Frequency-Tunable and Absorption/Transmission-Switchable Microwave Absorber Based on a Chitin-Nanofiber-Derived Elastic Carbon Aerogel. Chemical Engineering Journal)
研究の意義と将来展望
本研究成果は、カニ殻等の甲殻類から得られるナノキチンに、スマートで堅牢な電磁波吸収材料としての新たな価値を生み出すものです。無線通信社会における電磁波汚染の改善に貢献します。持続可能なバイオナノマテリアルのさらなる高付加価値化に向け、今後も研究を推進していきます。
担当研究者
准教授 古賀 大尚 (産業科学研究所 自然材料機能化研究分野)
キーワード
ナノキチン/弾性カーボンエアロゲル/電磁波吸収
応用分野
マテリアル、スマートデバイス
