研究 (Research)

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Ti-Zr積層造形合金製ジャイロイド構造体 (Additively manufactured Ti-Zr alloys with gyroid lattice structures)

教授 近藤 勝義、助教 Issariyapat, Ammarueda (接合科学研究所) KONDOH Katsuyoshi, Ammarueda Issariyapat (Joining and Welding Research Institute)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 接合科学研究所 (Joining and Welding Research Institute)

English Information

研究の概要

生体医療用途への展開を目指して、無毒性成分を利用した新たな高強度チタン合金を開発し、金属積層造形(以下、AM)を用いた三次元複雑構造体の創製および力学特性評価を行った。チタンと同様に、生体適合性を有するジルコニウム(Zr)を添加した強度と延性に優れたTi-Zr 合金を開発するとともに、構造最適化による内部の空間制御を通じて低剛性化に成功した。
本研究により、人工骨をはじめとする体内埋め込み型部材としての高い安全性を有する新規チタン材の合金・プロセス設計指針を確立するとともに、広範囲での製品・用途への適用可能性を明らかにした。

研究の背景と結果

チタンは、高い比強度に加えて優れた耐腐食性と生体親和性を有しており、その代表である Ti-6%Al-4%V(以下、Ti64)合金は、航空機用途をはじめ国内外で広く使用されている。但し、添加元素であるバナジウム(V)は毒性を有するため、体内埋め込み型インプラントなどの生体医療用途では、Ti64に代わるチタン合金が望まれている。
一方、チタン製人工骨を埋め込んだ場合、皮質骨との剛性の差異が顕著に大きいため、一部の骨に荷重が作用しない応力遮蔽を誘発する。その結果、荷重がかからない骨は萎縮して強度低下を招く。その対策として、低剛性β型チタン合金の利用や多孔質構造化による剛性低下などが有効である。
本研究では、チタンと同等以上の細胞適合性をもつ Zr 成分を添加元素とする高強度 Ti-Zr 合金を開発し、AM 法による構造最適化手法を用いて、周期的な三次元パターンが無限に続く三重周期極小曲面から成るジャイロイド(Gyroid)構造体を作製した。ここでは、純 Ti粉末と水素化ジルコニウム(ZrH2)粒子の混合体にレーザを照射し、粉末の急速溶融凝固過程での in-situ alloying を促すことで Zr 原子によるα -Ti 相の固溶強化と結晶粒微細化(粒界強化)を図った。一例として、Ti-7%ZrH2組成と Ti64組成を有する低剛性 Gyroid 構造体(空孔率~67%)の圧縮特性を比較したところ、剛性および最大圧縮応力はほぼ同等であった。変形挙動に関して、Ti64合金では Gyroid を構成するセルの局所的な座屈・破壊により急激な応力低下が生じた。一方、Ti-Zr 合金では純 Ti と同様に、その高い延性に起因してセルの座屈現象を伴うことなく試料全体が均一に塑性変形し、人工骨としての高い信頼性を確認した。
このように AM 技術を用いて、優れた生体親和性と高強度・高延性および低剛性を有する Ti-Zr 合金の創製に成功し、その社会実装可能性を明らかにした。

研究の意義と将来展望

Well-being な社会創造を目指す中で、高齢者にとって健康かつ幸福で安心できる生活環境を長期にわたり支えることは重要な課題である。そのために人工骨、歯科用インプラントや人工補助心臓など体内埋め込み型部品やシステムの小型化・高機能化は有用な手段である。これを実現する素材として、本開発チタン合金は高い可能性を有する。
一方、チタン製部品では寿命を迎えると、鉄鋼添加用途やスクラップ処分といった一方通行型ダウングレードリサイクルを基本としたライフサイクル設計が基本である。チタンは特定資源物資である航空機部材として主に使用されることを考えると、今後は経済と環境の好循環を可能とする高度な資源循環(サーキュラーエコノミー)プロセスの構築に向けた研究を積極的に推進する。

図1 (a) Ti-7%ZrH2 組成からなるジャイロイド構造体の外観と(b)断面構造の観察結果
図2 Ti-7%ZrH2 合金,Ti64合金および純Tiで作製したジャイロイド構造体の圧縮応力-歪み線図. Ti-7%ZrH2 合金試料の圧縮変形挙動のその場観察(圧縮歪み: 0~30%)

担当研究者

教授 近藤 勝義、助教 Issariyapat, Ammarueda (接合科学研究所)

キーワード

チタン/ジルコニウム/金属積層造形/ジャイロイド構造

応用分野

生体医療、自動車、航空機

参考URL

https://www.jwri.osaka-u.ac.jp/~dpt6/index.html
https://researchmap.jp/kondoh
https://researchmap.jp/ammarueda

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2025(未来社会共創を目指す)より抜粋・修正したものです。