研究 (Research)

最終更新日:

重症心不全根治を目指す“重厚3D心筋組織” の創成及び応用 (Creation of “3D thick cardiac tissue” for the treatment of heart failure)

特任教授 劉 莉、特任准教授 李 俊君 (工学研究科 フォトニクス細胞評価共同研究講座 )、教授 宮川 繁(医学系研究科 心臓血管外科学) LIU Li, LI Junjun (Graduate School of Engineering), MIYAGAWA Shigeru (Graduate School of Medicine)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 工学研究科・工学部 (Graduate School of Engineering, School of Engineering)
  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻) (Graduate School of Medicine, Faculty of Medicine (Division of Medicine))

English Information

研究の概要

重度心不全患者には心臓移植や人工心臓などの置換型治療法以外に有効な治療法がなく、再生医療としてヒト多能性幹細胞由来心筋細胞(hiPS-CMs)の移植が期待されている。
我々の研究チームは、hiPS￾CMs を用いた心筋シート治療法を開発し、2020年に虚血性心筋症(ICM)患者で First in Human に成功した。
本研究では、治療効果をさらに高めるため、パラクライン効果だけでなく、心筋特異的な力学的機能を持つ3D 重厚心筋組織の構築技術開発に取り込んでいた。生体内の微小環境や細胞構造を再現するため、FDA 承認済の生体分解性高分子材料 PLGA を用いた3D ファイバースキャフォールドを開発し、心筋細胞を播種して自発的に1mm 厚みを持つ心筋組織の構築に成功した。さらに回転培養システムを導入することで、高い生存率、良好な組織構造、豊富なサイトカイン分泌、優れた収縮特性を持つ心筋組織が得られた。この組織を心筋梗塞モデル動物に移植した結果、薄い心筋組織に比べ、心機能の回復と線維化の減少が顕著に認められた。

研究の背景と結果

重度心不全患者において、薬物療法などの限界を超えた場合、心臓移植や人工心臓治療といった置換型治療法以外に治療法が存在しない。しかし、これらの置換型治療にもドナー不足や合併症といった課題があり、そのため、再生医療としてヒト多能性幹細胞由来心筋細胞(hiPS-CMs)の移植による心機能回復が世界的に期待されている。2020年に、虚血性心筋症(ICM)患者に対する hiPS-CMs シートを用いた First-in-Human 試験が成功し、その後、ICM に対する医師主導治験が開始され、8例の患者への移植が完了している。
しかし、再生医療効果をさらに向上させ、置換型治療の適応症例を含む重症心不全の全ての症例に適用可能な有効な再生医療の開発には、いくつかの課題が存在する。具体的には、①移植される細胞数の不足、②移植心筋細胞の高い免疫原性による長期生着の難しさ、③未熟な心筋細胞による収縮力の不足、④2D 構造の限界による心筋の張力発生への寄与不足が挙げられる。これらの課題を解決するために、医工学的アプローチを活用し、大量の心筋細胞が力学的に寄与し、免疫抑制効果を高める3D 心筋組織を構築することが重要である。
本研究では、iPS 細胞由来の心筋細胞を用いて厚さ1mm 以上の高い生存率心筋組織を構築する技術を世界初で実現した。in vitro 実験では、従来の薄い心筋組織と比較して、力学的および電気生理学的特性が顕著に向上していることが確認された。さらに、心筋梗塞モデル動物への移植実験では、厚みのある心筋組織移植群において、大量の心筋細胞が移植部位に生着し、心機能の大幅な改善と線維化の抑制が検証された。

研究の意義と将来展望

本研究で開発された重厚3D 心筋組織は、置換型治療の適応症例を含む重度心不全患者に対する効果的な再生治療法として目指している。さらにこの3D 立体型スキャフォールドは骨格筋、皮膚、肝臓など他の臓器の修復治療にも応用が期待される。

図1 立体多層ファイバーを用いた心臓組織の構築および移植の概要図
図2 3D重厚心臓組織の構築及び機能評価
図3 3D重厚心臓組織を用いた心筋梗塞治療の有効性評価

担当研究者

特任教授 劉 莉、特任准教授 李 俊君 (工学研究科 フォトニクス細胞評価共同研究講座 )、教授 宮川 繁(医学系研究科 心臓血管外科学)

キーワード

組織工学/多能性幹細胞/心筋細胞/心筋梗塞/再生療法

応用分野

医療・ヘルスケア

参考URL

https://researchmap.jp/7000008694
https://researchmap.jp/liJJ
https://researchmap.jp/s-miyagawa3154

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2025(未来社会共創を目指す)より抜粋・修正したものです。