研究 (Research)
最終更新日:
2次元電子ガスによる熱電性能向上の新方法論 (New methodology of thermoelectric performance enhancement by two-dimensional electron gas)
教授 中村 芳明、講師 石部 貴史 (基礎工学研究科 システム創成専攻) NAKAMURA Yoshiaki, ISHIBE Takafumi (Graduate School of Engineering Science)
研究の概要
量子効果の利用は、超高熱電性能を実現する一つの方策として期待されている。例えば、二次元電子ガス(2DEG)を用いることで、ゼーベック係数の増大が生じて熱電出力因子が向上する。
本研究では、従来の1つのサブバンドに対して複数のサブバンドを利用した2DEG に注目し、新方法論を提案・実証した。複数のサブバンドを形成可能な三角量子井戸(GaAs/InGaAs)を作製し、高エネルギーの複数の電子伝導パスがゼーベック係数を増大させた。また、三角量子井戸に変調ドープを施すことで、高電子移動度も同時に実現した。この変調ドープした複数サブバンドを有する2DEG は、従来よりも4倍高い出力因子増大率をもたらした。さらに、本三角量子井戸を積層することにより、2DEG デバイスの高出力化に成功した。
研究の背景と結果
現在、世界の消費エネルギーの約60 % を占める廃熱を利用する熱電発電が新たな再生可能エネルギーとして注目されている。環境温度Tにおける熱電性能の向上には、無次元性能指数zT=S2σT κ-1(S: ゼーベック係数、σ : 電気伝導率、κ : 熱伝導率)の向上が必要である。ナノ構造技術によりκ低減は極限まで達成されてきたものの、熱電出力因子S2σの向上は不十分である。1993年に Dresselhaus らが量子効果により大幅に熱電性能向上が可能であるという理論予測を報告した。量子効果による電子状態密度の変化がゼーベック係数を増大させることで、出力因子が増大すると考えられる。
実際に、矩形量子井戸の2DEG において、実験的に出力因子増大を観測した報告例もある。しかし、さらなる出力因子増大のためには、従来量子効果を超越する新方法論の創出が必要である。本研究では、従来の1つのサブバンドに対して複数のサブバンドを利用した2DEG に注目し、新方法論を提案・実証した。矩形と比較して、三角量子井戸には複数のサブバンドがフェルミレベル近傍に密集して形成される。我々は、三角量子井戸の作製技術に成熟した GaAs/InGaAs 系を用いて、複数サブバンド2DEG を作製し、高エネルギーの複数の電子伝導パス(サブバンド)によりゼーベック係数が増大することを観測した。
その結果、複数サブバンド2DEG は、単一サブバンド2DEG よりも2倍程度高い出力因子を示した。加えて、三角量子井戸に変調ドープを施してあるため、高電子移動度も同時に実現している。この変調ドープした複数サブバンド2DEG は、従来の単一サブバンド2DEG よりも4倍高い出力因子増大率をもたらした。これにより、熱電変換が大きく進展することが期待される。また、本複数サブバンド2DEG を積層することにより、2DEG デバイスの高出力化に成功した。その出力は他の薄膜熱電デバイスを凌駕するものであり、2DEG が熱電デバイスの社会応用を実現させると期待できる。

研究の意義と将来展望
従来の究極の熱電出力因子向上技術として知られてきた量子効果に対して、増大率をさらに4倍向上させる新しい性能向上の方法論を構築した。これは、劇的な熱電性能向上を導くものとして学術的に高い意義を有する。また、これをデバイス化することにより、IoT センサ等を駆動する電源としての社会応用が期待される。
担当研究者
教授 中村 芳明、講師 石部 貴史 (基礎工学研究科 システム創成専攻)
キーワード
熱電変換/ナノテクノロジー/二次元電子ガス
応用分野
エネルギー、電子デバイス
参考URL
http://www.adv.ee.es.osaka-u.ac.jp/
https://researchmap.jp/research_nakamura
https://researchmap.jp/t-ishibe
