研究 (Research)
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高速化学合成した非天然糖によるバイオものづくり (Biomanufacturing using abiotically synthesized non-natural sugars)
教授 中西 周次、特任研究員 田畑 裕 (基礎工学研究科 附属太陽エネルギー化学研究センター) NAKANISHI Shuji, TABATA Hiro (Graduate School of Engineering Science)
研究の概要
グルコースやフルクトースなどのバイオマス糖は、人類の食料生産を支える基幹物質として、また化学品のバイオ生産技術における基質として極めて重要です。私達の研究グループは、タングステン酸ナトリウムなどの金属オキソ酸塩が中性条件下における糖の合成触媒として機能することを見いだしました。この反応では天然には存在しない糖(非天然糖)が得られますが、私達は化学合成された非天然糖が微生物により資化されることを明らかにしました。さらに、モデル微生物としてコリネ型細菌を用い、化学合成した非天然糖を唯一の基質とした乳酸の発酵生産に成功しました。
研究の背景と結果
グルコースやフルクトースなどのバイオマス糖は、人類の食料生産を支える基幹物質として、また化学品のバイオ生産技術における基質として極めて重要です。一般に、バイオマス糖は水と CO2を原料として光合成によって作られます。しかし、光合成、つまり農業によってバイオマス糖を大量生産するには、多くの水と栄養塩(リン、窒素など)ならびに大面積の土地が必要であるため、プラネタリー・バウンダリーの観点から、その供給の持続可能性に懸念が持たれています。また、こうした従来型のバイオマス糖は、燃料や化学製品の生産という膨大な需要に対してその供給量に限界があり、工業利用の拡大による食料との競合が起こる懸念がありました。
糖の化学合成は、(1)CO2の還元によるホルムアルデヒド(HCHO)の生成反応、(2)HCHO を基質とする糖合成反応(ホルモース反応)の統合により実現されます。この構想実現に向けた最大の課題は、ホルモース反応における選択的な糖合成のための触媒開発にあります。ホルモース反応が進行する塩基性環境中では、多くの副反応も同時に起こることから糖の収率向上が原理的には見込めませんでした。しかし、当研究グループは、中性条件下での高選択的な糖の合成を可能にする触媒の開発に成功し、糖の収率を大幅に向上させることに成功しました。さらに、化学合成された糖の多くは自然界には存在しない非天然型構造を持つにも関わらず、微生物によって資化可能であることも明らかにされています。
より具体的には、コリネ型細菌をモデル微生物として、合成糖液に含まれる生育阻害因子を明らかにするとともに、当該微生物による合成糖液を基質とした乳酸の生成に成功しました。これは、触媒化学的に合成された糖を基質としてバイオものづくりが行われた世界で初めての例となっています。
研究の意義と将来展望
本研究は、化学合成された非天然糖を原料としてバイオものづくりが行われた世界で初めての例です。非天然糖の化学合成は、光合成と比較して少なくとも数百倍と高速であり、水や栄養塩もほとんど必要としないことから、食料と競合しない持続可能な原料糖の調達が可能となります。将来的には、グルコースなどの天然糖を代替する新しい糖資源として当技術が活用され、「CO2を原料とした生物が資化可能な糖の高速・オンサイト生産システム」へと本技術が発展し、環境調和性の高いバイオものづくり技術の一層の拡大に貢献することが期待されます。

担当研究者
教授 中西 周次、特任研究員 田畑 裕 (基礎工学研究科 附属太陽エネルギー化学研究センター)
キーワード
バイオものづくり/CO2資源化/糖
応用分野
バイオものづくり、エネルギー、環境
参考URL
https://rcsec.osaka-u.ac.jp/nakanishilab
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2023/20231108_2
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240208_1
https://researchmap.jp/read0191166
https://researchmap.jp/tbt
