研究 (Research)
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Ni基超合金の3D積層造形における溶質元素偏析の予測 (Prediction of solute element segregations in additive manufactured nickel-based superalloy)
助教 奥川 将行 (工学研究科 マテリアル生産科学専攻) OKUGAWA Masayuki (Graduate School of Engineering)
研究の概要
Ni 基超合金の粉末床溶融結合型金属3D 積層造形において、材料中の元素分布の偏りは力学特性に大きく影響し、信頼性の高い材料設計において重要な問題である。本研究では、計算熱流体力学シミュレーションによる温度場解析とフェーズフィールド法による元素分布予測を錬成させて、Ni 基超合金の粉末床溶融結合における最大108 K s-1の高冷却速度での凝固中に形成される数百 nm 程度の局所的な元素の分布の偏りを予測することに成功した。さらには、予測された元素分布が割れやすさに与える影響を評価することで、割れの発生を抑制するための新たな合金設計指針を提案した。
研究の背景と結果
Ni基超合金は、高耐熱性を示すとともに、優れた耐環境性を持つため、発電用・航空機用ジェットエンジンなどのガスタービン部材として広く用いられている。ただし、脱炭素社会の実現に向けて、燃焼温度を高温度化するために、Ni 基超合金の耐用温度をさらに高温度化することを志向した金属3D 積層造形を活用した高性能化が広く研究されている。特に、粉末床に対してレーザービームまたは電子ビーム照射を繰り返して積層する粉末床溶融結合型が、金属3D 積層造形の主流の方法の一つとなっている。
金属3D 積層造形は、鋳造法などの従来材料製造プロセスと比較して、1000倍以上の急速冷却を特徴とし、部材の複雑な外形上の付与に加えて、原子の並び方とそれに関係する部材特性を制御することが提案されている。さらには、部材の場所ごとに制御することも可能である。一方、そのような超急冷条件下では、数百 nm 程度の局所的な元素の分布に偏りが生じた金属3D 積層造形に特徴的な界面が形成される。部材の劣化へつながることが課題となっており、その複雑な元素分布の予測技術の確立が急務とされてきた。
本研究では、9つもの多種類の元素から構成される Ni 基超合金における計算熱流体力学シミュレーションによる温度場解析とフェーズフィールド法による元素分布予測を連成させ、材料中の元素分布を極めて高い空間分解能で予測することを可能とした。予測された結晶成長組織は、実験観察した金属3D 積層造形中の材料組織をよく再現する。さらには、予測された溶質元素の偏析挙動を詳しく解析することで、元素分布の偏りが、材料内のセル境界、溶融池境界の内部、熱影響部などの組織形成メカニズムに大きく依存することを明らかとした。加えて、各領域の割れ感受性を評価することで、特に、上の層の積み重ね中に再溶融が発生する溶融池境界近傍領域では割れの発生が抑制されることを提案した。
研究の意義と将来展望
本手法を適用することで合金組成と割れやすさの関係を系統的に評価することができ、部材の変形や破壊の予測へとつなげることが可能となる。さらには、部材の破壊の起点となる亀裂の発生確率を著しく低下させる高強度な合金を設計する道を開くものであり、実験での試行錯誤を省力化し、シミュレーション空間内で最適な合金組成を探索することができる。結果として、今回の元素分布予測技術は航空・宇宙、自動車、エネルギーなど、幅広い分野に波及することが期待される。さらには、本予測手法とデータ科学的手法とも組み合わせることで、金属3D 積層造形に最適化された新規 Ni 基超合金の加速的な開発にも資するものと考える。


担当研究者
助教 奥川 将行 (工学研究科 マテリアル生産科学専攻)
キーワード
Ni 基超合金/金属3D 積層造形/溶質元素偏析/数値熱流体力学計算/フェーズフィールド法
応用分野
航空宇宙、自動車分野、スマート社会
参考URL
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/855871fe68b292d8.html
http://www.mat.eng.osaka-u.ac.jp/msp3/
https://researchmap.jp/masayuki.okugawa
