研究 (Research)

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空間光イジングマシンの低ランク計算モデル (Low-rank computing models of spatial photonic Ising machines)

教授 鈴木 秀幸 (情報科学研究科 情報数理学専攻) SUZUKI Hideyuki (Graduate School of Information Science and Technology)

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 情報科学研究科 (Graduate School of Information Science and Technology)

English Information

研究の概要

空間光イジングマシンは空間光変調器を用いて高速・高効率に最適化計算を行うイジングマシンである(図1)。光の並列性を活用することにより1万を超える変数を持つ大規模な組合せ最適化問題が扱えるという優れた特徴を持つ一方で、扱える問題のクラスに厳しい制約があり、実問題への応用において大きな課題となっていた。本研究では、この課題を解決し、空間光イジングマシンが扱える組合せ最適化問題の範囲を飛躍的に拡大する計算モデルを提案した。この計算モデルを用いると、光の特性により大規模で全結合のイジング問題が効率的に扱えるだけでなく、特に低ランク性を持つ問題に対して高効率であるという独自の特徴を持つことが明らかになった。現在、この低ランク計算モデルと多重化実装をさらに発展させる共同研究を進めている(図2)。

図1. 空間光イジングマシン
図2. JST ALCA-Nextプロジェクト概要

研究の背景と結果

イジングマシンとは、イジング問題と呼ばれる組合せ最適化問題を高速に解く専用ハードウェアである。多くの重要な組合せ最適化問題がイジング問題として表現できることから、量子アニーリング等の様々な原理に基づくイジングマシンの研究開発が盛んに行われている。2019年に提案された空間光イジングマシンは、空間光変調を用いて組合せ最適化問題を解くイジングマシンである(図1)。光の空間並列性を活用することにより、計算の1反復にかかる時間が原理的には変数の数によらず一定となり、1万変数以上の大規模なイジング問題であっても高速・高効率に扱えることから、優れたスケーラビリティを持つイジングマシンとして期待されている。また、光を用いるため結線が不要であり、全結合の問題が容易に扱えることも優れた特徴である。しかし、これまでは扱えるイジング問題に厳しい制約があり、実問題への応用において大きな課題となっていた。
本研究では、空間光イジングマシンのハードウェア実装を変えることなく、任意のイジング問題を扱うことができる新しい計算モデルを提案した。この計算モデルを用いると、光の特性により大規模で全結合のイジング問題が効率的に扱えるだけでなく、特に低ランク性を持つイジング問題に対して高効率であるという独自の特徴を持つことが明らかになった。実際に、これまで空間光イジングマシンが扱えなかった整数重みナップサック問題を低ランクのイジング問題として定式化し、最適化計算が可能であることを実証した。さらに、この計算モデルにより統計的学習を行うための具体的な学習則を導出し、手書き数字画像データの低ランク学習が行えることを示した。

研究の意義と将来展望

この計算モデルは大規模な組合せ最適化の実問題を解く新しい光計算技術の実現に道筋を付けるものである。本研究により空間光イジングマシンの実応用が進展すれば、大規模な組合せ最適化の実問題に対する計算の高速化や消費電力の低減が期待される。また、複雑化・大規模化する社会課題への応用が進展すれば、社会システムのさらなるスマート化、たとえばエネルギー利用の効率化や CO2排出量の低減によるカーボンニュートラル実現への貢献等も期待される。

担当研究者

教授 鈴木 秀幸 (情報科学研究科 情報数理学専攻)

キーワード

イジングマシン/光計算/組合せ最適化/統計的学習

応用分野

イジングマシン、光計算、組合せ最適化、統計的学習

参考URL

http://www-nomo.ist.osaka-u.ac.jp/
https://researchmap.jp/hideyuki_suzuki

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2025(未来社会共創を目指す)より抜粋・修正したものです。