研究 (Research)

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“血液1滴”から気管支喘息を診断!~喘息の新規バイオマーカー同定~ (Galectin-10 in serum extracellular vesicles reflects asthma pathophysiology)

准教授 武田 吉人、招へい教員 吉村 華子 (医学系研究科 呼吸器・免疫内科学) TAKEDA Yoshito, YOSHIMURA Hanako (Graduate School of Medicine)

  • 医歯薬生命系 (Medical, Dental, Pharmaceutical and Life Sciences)
  • 医学系研究科・医学部(医学専攻) (Graduate School of Medicine, Faculty of Medicine (Division of Medicine))

English Information

研究の概要

気管支喘息において、病態や診断に有用な新規バイオマーカー(BM)としてガレクチン10を同定しました。今回、研究グループは、新規メッセンジャーとして細胞・組織間コミュニケーション手段として機能することが注目されている血中の細胞外小胞(エクソソーム)に着目し、最新プロテオミクス(蛋白網羅的解析)を駆使することで新規喘息バイオマーカーの一つとしてガレクチン10(Galectin-10)を同定しました(図)。ガレクチン10を含む新規 BM 分子は、通常、喘息の診断において、ゴールドスタンダードとされる末梢血好酸球数に診断能で優るだけでなく、気流閉塞や粘液栓とも有意な相関を認めました。さらに、同様の手法を用いることで、喘息に合併する好酸球性副鼻腔炎においても、診断や病勢判断における有用性が示唆されました。

研究の背景と結果

WHO の報告では、世界の喘息患者は約3億人に上り、そのうち25万人が喘息のために死亡しています。国内の調査では、成人の喘息有病率4.2% で増加傾向にあります。喘息の治療法が大きく進歩してきたものの、喘息は年々増加する傾向にあり、多くの人が喘息に苦しんでいます。気管支喘息は、症状、気道過敏性や気道可逆性により総合的に診断される疾患で、採血では血中好酸球、IgE や FeNO(呼気一酸化窒素)により、肺内の病態を推測しながら治療法を検討しているものの、肺内の疾患活動性を反映する分子を血液で捉えるには限界がありました。
気管支喘息は、肺におけるアレルギー疾患の代表として認知度は高いものの、病態や診断法など課題も多い疾患です。とりわけ、複雑多様な病型(表現型)や疾患活動性を捉える新規バイオマーカー開発が不十分でした。本グループは、今まで慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎、新型コロナウイルス肺炎において、エクソソームの最新プロテオミクスから、新規 BM を同定するだけでなく、解明や創薬にも役立ててきました。
研究グループでは、新規メッセンジャーとして注目されている細胞外小胞(エクソソーム)の網羅的解析により、血液中に浮遊するエクソソーム(血液1滴)から3000種類以上に及ぶ膨大な蛋白を捉えるだけでなく、喘息肺も同時に網羅的解析を実施する統合解析により、喘息病態と密接に関わる新規BMを世界で初めて同定しました。とりわけ、ガレクチン10を含む新規 BM 分子は、喘息の診断や気流閉塞(粘液栓)だけでなく、喘息病態と密接に関わるエトーシス(好酸球の細胞死)と相関することも見出しました。
さらに、喘息に合併することが多い好酸球性副鼻腔炎(ECRS)においても、同様の BM が診断のみならず、病勢(疾患活動性)と相関することを見出しました。従来、喘息に活用されてきたバイオマーカーとして血中好酸球数が主流でしたが、エクソソーム中の鍵分子、とりわけ、ガレクチン10は、好酸球数に優る新規 BM であることが示唆されました。

研究の意義と将来展望

本研究成果は、複雑多様な喘息において、本成果から見出された新規 BM が、喘息診断だけでなく、病態解明や治療法開発に有用であることが示唆されました。また、新規 BM は、炎症性疾患における好酸球性炎症の同定にも応用可能と考えられます。さらに、今後は、難病や悪性疾患においても、本手法がリキッドバイオプシーとして有用である可能性が示唆されました。

担当研究者

准教授 武田 吉人、招へい教員 吉村 華子 (医学系研究科 呼吸器・免疫内科学)

キーワード

細胞外小胞/個別化医療/オミクス/バイオマーカー/生物学的製剤

応用分野

医療・ヘルスケア、創薬

参考URL

http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/research/r-resp08.html
https://researchmap.jp/yoshi10
https://researchmap.jp/read0051725

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2025(未来社会共創を目指す)より抜粋・修正したものです。