研究 (Research)
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光を当てると発光挙動を変えながら融ける有機結晶の開発 (Organic crystal melts under light with luminescence evolution)
助教 谷 洋介 (理学研究科(現名古屋大学特任准教授))、助教 五月女 光(基礎工学研究科 物質創成専攻) TANI Yosuke (Graduate School of Science), SAOTOME Hikaru (Graduate School of Engineering Science)
研究の概要
光を当てると時々刻々と発光色と強度を変えながら融解する有機結晶 を 世 界 で 初 め て 見 出 し た( 図 1, 動 画 :https://youtu.be/-atobxlggBk)。その発光挙動の変化から、結晶中で分子がどのように動いて融解に至るかを明らかにした。より具体的には、独自に開発したりん光を示す分子の結晶が光照射によって融解する(光融解)ことを見出し、その際の光り方の変化を顕微分光法によって詳細に調べた。この分子のりん光挙動は立体配座によって大きく変わる特徴があり、それを利用して、分子の立体配座が自己触媒的に変化して融解に至るという光融解メカニズムを解明した。

研究の背景と結果
結晶をミクロな視点で見ると、原子や分子が規則正しく並んでいる。しかし、球形の原子やイオンが並ぶ無機結晶と異なり、有機結晶はその構成単位である分子に立体的なかたちがある。そのため、分子が整然と並んでいるときは結晶として安定でも、かたちの違うものが混ざってかみ合わせが悪くなったり、一部だけ規則性が乱れたりすると、結晶の性質は大きく変化し、ときには融解して液体になると考えられる。
このような結晶の融解は通常、加熱によって起こる。一方、ごく一部の有機結晶は、光を当てると融ける(光融解)ことが知られていた。これは、分子が光を吸収することで、その立体的なかたちを変えるためである。しかし、光を吸収してかたちを変える分子は数多くあるにもかかわらず、これまで光融解する有機結晶のほぼ全ては、アゾベンゼンと呼ばれる共通したモチーフを元に設計されていた。そのため、材料設計と機能の多様性は大きく制限されており、融解メカニズムには不明な点が多く残されていた。
本研究では、アゾベンゼンとは全く異なる1,2- ジケトンというモチーフを元にした発光性分子の結晶が、光融解することを見出した。さらにこの結晶は、初めは緑に弱く光るもののすぐに消え、やがて黄色に強く発光し始め、その後融解した(図1)。これは、発光色と強度の変化を伴う世界で初めての光融解現象である。アゾベンゼンは一般に発光しないため、これは新しいモチーフの発見によって初めて拡張された機能と言える。
単結晶 X 線構造解析の結果、この分子は結晶中ではねじれた立体配座をとっていることがわかった。一方、以前の研究から、黄色の発光は平らな立体配座から生じることがわかっていた。今回、黄色の発光は結晶が融ける前に生じたため、分子が結晶中で立体配座を変えたことが明らかになった。さらに、この発光強度の時間変化は S 字型のカーブを描いたことから、立体配座の変化が自己触媒的に進行して結晶の規則性を乱すことで光融解に至るという融解メカニズムを解明することができた(図2)。

研究の意義と将来展望
固体から液体への相転移(融解)は、材料の物性を顕著に変化させる。一般的に融解は温度上昇(熱)によって起こるが、ごく一部の有機結晶は、光融解することが知られていた。光融解材料は、光の高い空間分解能から、フォトリソグラフィなど微細加工技術への応用が期待されるほか、光エネルギーを融解潜熱として蓄えて利用する光熱変換型エネルギー貯蔵材料としても注目されている。しかし、光融解する有機結晶のほとんどは発光しないアゾベンゼン類であり、詳細な光融解メカニズムは未解明であった。本研究成果は光融解する新しい分子骨格を報告するとともにその光融解メカニズムを解明しており、有機結晶の機能および設計を大きく拡げるものと期待される。
担当研究者
助教 谷 洋介 (理学研究科(現名古屋大学特任准教授))、助教 五月女 光(基礎工学研究科 物質創成専攻)
キーワード
化学/有機結晶/光/刺激応答材料
応用分野
光加工、エネルギー貯蔵、センサー
参考URL
https://youtu.be/-
https://researchmap.jp/tani-y/
https://researchmap.jp/hikarusotome/
