研究 (Research)

最終更新日:

ブルーエネルギー開発に向けた極薄ナノポア膜発電素子の研究 (Blue energy harvesting on ultra-thin nanopore membranes)

准教授 筒井 真楠 (産業科学研究所 バイオナノテクノロジー研究分野) TSUTSUI Makusu (SANKEN (The Institute of Scientific and Industrial Research))

  • 理工情報系 (Science, Engineering and Information Sciences)
  • 産業科学研究所 (SANKEN (The Institute of Scientific and Industrial Research))

English Information

研究の概要

海水と河水の塩分濃度差から高効率に電気エネルギーを生み出す逆電気透析発電技術の熾烈な研究開発競争が国内外で展開されている。従来技術では発電にイオン交換樹脂が用いていたが、厚さがマイクロメートル以上の膜であるため、イオンの選択性は良好なものの透過性に乏しく、低いエネルギー変換効率しか得られなかった。我々はこの現状を打破するべく、高いイオン選択性と透過性を両立する新たなイオン交換膜として、膜厚が数十ナノメートルの極薄固体膜にナノサイズの細孔(ナノポア)を加工した極薄ナノポア膜の研究開発を進めている。

研究の背景と結果

半導体技術を応用して、厚さ50 nm 以下の極薄窒化シリコン膜中に規定した数・配置・直径のナノポアを加工するプロセス技術を確立した。これを駆使して、まず1個のナノポアが有する逆電気透析発電性能を評価した。その結果、直径20 nm のナノポアが100 kW/m2以上の発電性能を有することを明らかにした。一方、ナノポアを二次元アレイ状に集積したマルチナノポア膜になると、膜の空孔率の増大に伴い発電性能は劣化するものの、社会実装の目安とされている5 W/m2の性能を大きく上回る約100 W/m2の電力密度を達成した。また、この発電性能劣化の原因を追究した結果、極薄ナノポア膜になると、電荷選択的イオン拡散輸送に伴って互いに近接するナノポアの局所空間における塩分濃度分布が影響を受け、実効的な塩分濃度差が縮小する可能性を明らかにした。この新たな課題を解決するために、塩分濃度差発電性能に対するナノポア膜の最適設計や、電界効果を応用したナノポア膜のイオン選択性制御法を創成し、高効率エネルギー変換を可能にする大面積極薄ナノポア膜の可能性を示した。
現在では、この固体ナノポアと従来のイオン交換樹脂を複合した新たな極薄イオン交換膜の研究開発を進めている。

研究の意義と将来展望

半透膜を隔てて食塩水と真水があると、濃度拡散によって真水側から食塩水側に水分子が移動し、浸透圧が生じる。我々が化学の実験で学ぶこの基本的な現象を発電に利用しようとする研究が現在大きな注目を集めている。その一つが、逆電気透析技術である。この技術では、陽イオンまたは陰イオンだけを透過するイオン交換膜を隔てて塩分濃度の異なる水を配す。すると、化学実験で学ぶ浸透圧現象と同じように、濃度拡散によってイオンが高濃度側から低濃度側へと移動する。その際、陽イオンまたは陰イオンだけが膜を透過するため、イオンの移動に伴い電位差が生じる。つまり、イオンのギブス自由エネルギーが電気エネルギーに直接変換される訳である。この発電原理を、地球上にある莫大な量の海水と河水で実践することで、原子力発電所1000基分に相当する発電が可能になると期待されている。
発電量が天候等に左右される風力・太陽光発電とは異なり、膜と塩分濃度差があれば発電可能な原理であるため、安定な電力供給が可能なシステムとなる。その社会実装の鍵となる大面積なイオン交換膜による高効率な逆電気透析発電を極薄ナノポア膜で実現することで、海洋資源が豊富な我が国ならではのサステナブルなクリーンエネルギー資源が創出できる。

担当研究者

准教授 筒井 真楠 (産業科学研究所 バイオナノテクノロジー研究分野)

キーワード

塩分濃度差発電/ナノポア/イオン交換膜

応用分野

クリーンエネルギー、ナノテクノロジー

参考URL

https://researchmap.jp/makusu

※本内容は大阪大学共創機構 研究シーズ集2025(未来社会共創を目指す)より抜粋・修正したものです。