研究 (Research)
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都市ストックにおける屋根面・壁面設置太陽光発電ポテンシャルの推計 (Large-scale building-integrated photovoltaics installation on building facades)
准教授 山口 容平、博士後期課程 正野 景大 (工学研究科 環境エネルギー工学専攻) YAMAGUCHI Yohei , SHONO Keita (Graduate School of Engineering)
研究の概要
太陽光発電(PV)モジュールの設置は、都市部の建築ストックの脱炭素化に最も効果的な対策のひとつである。近年では建材一体型太陽光発電(BIPV)モジュールの開発が進められており、屋根面のみならず、ファサード面を利用した太陽光発電設置が技術的に可能となっている。本研究では、地域規模における建物の表面の時間ごとの太陽光発電の潜在的可能性を推定するモデルを開発し、日本の東京にある非住宅建築物に適用したケーススタディを示した。
研究の背景と結果
これまで屋根面については太陽光発電の発電ポテンシャルの推計が数多く行われているが、建築ストックのファサード面において BIPV モジュールを大規模に設置することを想定し、広域でポテンシャルを推計する研究は行われてこなかった。また、広域で推計されたものは年間の積算値に関するものにとどまり、時系列挙動を含めて分析対象としたものは存在しなかった。このような背景から、本研究では、BIPVを建築物の外壁に大規模に設置した場合を想定し、地域規模で、1時間またはそれ以下の高い時間分解能で建築物の表面における太陽光発電の潜在能力を推定するモデルを開発した。開発手法ではまず、建築物表面に垂直方向および水平方向に等間隔でセンサーポイントを生成し、各ポイントで単位面積あたりの日射量を計算する。ここでは、方位別に GIS データを用いて隣接建築物等の障害物の高さを検知し、それを考慮したうえで日射計算を行う。センサーポイントを中心としてボロノイ分割を行い、センサーポイントの推計結果を適用することで、対象エリアの建築物の面全体における日射量・PV 発電量を障害物の影響を考慮して定量化する。推計精度の確かなシミュレーションソフトウェアと比較して精度検証を行ったところ、本モデルでは屋根と外壁の日射量をそれぞれ1% 未満、-10% 未満のオーダーの誤差範囲内で推計できることを確認した。
東京都の業務施設を対象としてファサード面に設置された BIPV による発電ポテンシャルを推計したところ、2050年の東京都の業務施設ストックの年間電力需要の15%~48%を太陽光発電で賄うことが可能であることを示した。これは脱炭素社会の実現に向けた BIPV の有用性を示すものである。時間単位の推計結果では、BIPV の設置方位により季節・時刻特性が異なり、年間日射積算量に閾値を設けて設置場所を設定した場合、需給パターンに大きな影響を及ぼすことが明らかになった。また、電力需給を負荷持続曲線としてとりまとめ、その影響を定量化した。このような結果は BIPV に適した設置面の把握、普及時の需給予測、電力需給運用への影響評価、需給調整力の要求分析に示唆を与えるものである。
研究の意義と将来展望
本研究では都市建築ストックの脱炭素化に有意義な知見が得られた。特に、年間推計結果では、BIPV モジュールが建築ストックの脱炭素化を大幅に促進できることが明らかになり、2050年の建築ストックの電力需要の33%は建築物のファサードに設置された BIPV、15%は屋根に設置された PV モジュールで賄うことができることが示された。さらに、設置方位により日射の時刻別特性が異なることから、どの面にBIPV を設置するかによって発電の季節・時刻特性が大きく変化することが分かった。特に大規模に設置が行われた場合、系統側発電設備の資産利用率の低下が生じ、電力需給の調整力が必要となることがわかった。


担当研究者
准教授 山口 容平、博士後期課程 正野 景大 (工学研究科 環境エネルギー工学専攻)
キーワード
建材一体型太陽光発電/地理情報システム/電力需給解析/太陽エネルギー/都市脱炭素
応用分野
都市脱炭素化、スマートシティ、エネルギーマネジメント
参考URL
https://see.eng.osaka-u.ac.jp/seeue/seeue/
https://researchmap.jp/read0140668
