研究

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化学反応に着目した新たな“生命の設計図 ”探究 ~不思議な魚の発生休眠・超速老化を手掛かりに~

助教 荻沼 政之(微生物病研究所)

  • 医歯薬生命系
  • 微生物病研究所

研究の概要

近年、解糖系などのエネルギー代謝経路が多様な生命現象を制御することが明らかになり、がん等の疾患研究の分野で精力的に研究が行われています。しかし、胚発生や器官構築及び恒常性維持など、生命の根幹をなす生理現象での代謝動態・機能はほぼ未解明です。私はこれまで、マウス、ニワトリ初期胚やヒト胚性幹細胞(iPS細胞)を用いた解析を通じ、エネルギー代謝経路によって生じた代謝物が組織パターン形成因子として働くことを世界に先駆けて示してきました。現在はこの知見を基盤に、高速老化と発生休眠という特徴的性質を持つ新規モデル動物ターコイズキリフィッシュ(図1,2)を用い、私が独自構築したエネルギー代謝動態可視化系においてエネルギー代謝による組織制御の全貌解明に取り組んでいます。代謝等の化学反応から遺伝子(タンパク質)とは別の組織形成・維持機構を紐解く独創的な発想で、新たな “生命の設計図 ”の発見を目指します。

図1 ターコイズキリフィッシュ(発生が停止した受精卵(図2)のまま6ヶ月~最大3年も休眠した後、急速に発生・老化が進み4ヶ月で寿命を迎える)
図2 休眠中のターコイズキリフィッシュ胚(特徴的な代謝変動が組織を安定に保持する。図中の橙色の部分で代謝状態が変わる)

研究の先に見据えるビジョン

生命の時間軸を延ばせるとSFが現実に

例えば、ターコイズキリフィッシュの休眠期間を人間にも再現できれば、それは約800年以上に換算され、老化防止薬による超長寿社会や宇宙旅行など、SFの世界が現実になるかもしれません。私は世界でも未だ数例しかないキリフィッシュの休眠研究を実行し、代謝物のような小分子化合物の化学反応に注目した独自研究によって、生命の時間軸を延ばす可能性を広げたいと考えています。

担当研究者

助教 荻沼 政之(微生物病研究所)

キーワード

代謝/組織形態形成・維持/生物の “新しい設計図 ”/ターコイズキリフィッシュ

応用分野

臓器の安定的保存/オルガノイドの保存/宇宙旅行/老化を停止する薬

※本内容は大阪大学 経営企画オフィス制作「大阪大学若手研究者の取組・ビジョン2022」より抜粋したものです。